多和田葉子の作品の演劇化、並びに多和田本人による朗読会やパフォーマンス、インスタレーションに関する調査と分析から、多和田文学における演劇性の意味について考察を試みた。多和田作品の演劇化の状況については、戯曲の舞台化のみならず、小説を原作とした舞台化、複数の作品をコラージュした舞台化等、多様なパターンがあることが確認できた。また多和田の活動については、朗読にパフォーマンスが加わるとともに、インスタレーションにも取り組んでいることが確認できた。以上から、鑑賞者の知覚や認識に訴えかける表現手法が多和田文学においてますます重要な位置を占めるようになったと結論した。
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