研究課題/領域番号 |
24520406
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
金沢 篤 駒澤大学, 仏教学部, 教授 (20286686)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 書誌学 / 近代日本 / インド学 / 仏教学 / 比較思想 / 東西文明 / サンスクリット |
研究概要 |
明治以降、おびただしい数量の書物が刊行され、多くの日本人を啓発啓蒙したことが想像される。書物は散逸しその大半は失われ埋もれてしまっている。誤解と誤記も山積みである。近代日本に於けるインド学仏教学の成立と展開の様を、膨大な文献の山の中に直に参入して俯瞰する。そしてその流れを文献的に明確に裏付けるべく企図されたのが本研究である。 古い書物は入手が困難であり、当初、成果をあげることもかなりの困難が予想されたが、幸い国会図書館の蔵書で著作権の切れた古い書物が続々と電子化され、PDFとしての公開が促進され、本研究の資料収集の効率を飛躍的に向上させた。最終的なデータ処理のためのコンピュータやスキャナの設置を後回しにして、PDF資料を手軽に参照する携帯可能なビューアなどをフルに活用して、初年度としては予想以上の成果をあげることができた。 また、本研究の推進の為には、書物の流通させる状況の調査、出版の事情の調査も不可欠であり、その為に、近代における活字印刷と出版のメッカたるドイツのライプツィヒなどへ出張し、国立図書館や博物館での現地調査を進めることができた。 膨大な資料をどのようにして組織的に活用して、成果を出すかという方法的な模索も初年度の一つの大きな課題であったが、縦割りの総花的な作業では、時代を動かした個々の人間のエネルギッシュな軌跡は捉えきれないと考え、歴史の大いなる流れの中の一点に狙いを定め、それに執拗に纏い付く方法こそ、真の歴史的な流れの再構築に不可欠であるとの展望に立っての作業であったが、いくつかの事例に則して成果をまとめることを通して、その方法の妥当性も具体的に確認できたように思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中心は、文献資料の収集と整理・解読を根底に持つ。古い文献は散逸し、思うように資料を参照できないとの懸念を持っていたが、国会図書館のデータの電子化が予想以上に進み、比較的効率よくその作業を遂行出来た。海外の古い図書も、著作権の切れたものに関してのオンデマンド出版も盛んで、各種刊本も比較的容易に参照できるようになった。またインターネット上では様々な情報が飛び交っており、方法的なぶれのない組織的な作業を通じて、かなりの具体的な知見を得ることができた。 (1)近代日本に於けるサンスクリット学の成立(2)近代日本に於ける仏教学成立の社会的背景の実情(3)近代日本のインド学仏教学の成立に関与した東西交流の実情(4)著作権の明確に確立していなかった時代の出版事業の実情といった観点に立っての資料収集・整理解読作業が、効率よく進めることが出来たことが何よりも大きな理由である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の作業の反省を踏まえ、研究環境の整備を図ると共に、研究の核となるトピック数を増加し、複合的な、より組織的な資料収集と整理解読に努める。そしてその成果を引き続き、雑誌論文やインターネットでの公開を通じて、各国語で大々的に発表したい。ヨーロッパとインドへの調査旅行も視野に入れての、多彩な文献収集も精力的に展開したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
PDF化などの遅れている文献の収集を特に心がけ、真に貴重な埋もれ行く文献を発掘収集し、そのデジタル化と復刻・公開を図る。その為に遅ればせながら、コンピュータやプリンタやスキャナなどのコンピュータ環境を整えたい。国内外の研究者との情報交換を図るべく、各地で行われている勉強会、研究会、学会に参加する出張費にも当てたい。
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