助成第3年度(最終年度)の本年2014年度は、2度目の大きな行事として、2014年10月25日(土)に、本年も韓国及び日本から研究者を招き、国際シンポジウム「朝鮮人留学生たちが学んだもの、発信したこと-『学之光』を中心に-」を開催した。そしてこの日をはさんで、10月24日(金)に打ち合わせを兼ねた座談会、26日(日)に文学踏査と、3日間にわたる行事を執り行なった。シンポジウムでは、基調講演として、金允植ソウル大学名誉教授による「韓国文学を研究する、私が知っている日本人教授たち」に引き続き、金栄敏延世大学教授の「1910年代留学生雑誌『学之光』研究-いくつかの論点を中心に-」、権ボドゥレー高麗大学教授の「1910年代『学之光』の海外思想受容」、申ミサム嶺南大学講師の「李石薫小説研究」が発表され、それぞれ活発な討論が繰り広げられた。1881年に最初の朝鮮人留学生が来日した後、1896年に至って初めて、慶応義塾大学に在学していた朝鮮人留学生たちによって留学生雑誌『親睦會會報』が刊行され、以後陸続と留学生雑誌が出されるが、いずれも単発的で持続力に欠けるうらみがあった。1910年8月の韓国併合という国難を経験した留学生たちは、分散した留学生たちの大同団結を試み、1912年に在日本東京朝鮮留学生学友会を結成、14年から機関誌『学之光』を刊行するに至るのである。この雑誌は30年まで発行されるが、最も重要なのは、朝鮮本国で十分な出版活動が許されなかった1910年代のそれであり、日本を経由して得た欧米の最新の思想、知識等を本国に発信し続けた。文学にあってもこの時期に大きな文体変化を見せ始めるが、これについては新聞、雑誌等の分析を引き続き行なう必要があり、また日本語の影響など精細な調査が求められる。今後の課題としておきたい。また布袋は、2度のシンポジウムで、金史良について、作品と日本語、解放後北朝鮮での活動について発表した。
|