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2013 年度 実施状況報告書

海外紀行文の総合的研究―視覚的想像力の諸相をめぐって

研究課題

研究課題/領域番号 24520410
研究機関立命館大学

研究代表者

中川 成美  立命館大学, 文学部, 教授 (70198034)

キーワードトラベルライティング / 海外紀行文 / 紀行文 / 旅行記 / 植民地 / 移動・移民 / 文化交換
研究概要

本研究は近代以降に著された海外紀行文、旅行記を対象に、海外文化の受容・摂取と近代文学の生成過程との関連 を考察しようとするものである。平成24年度にはアジアを中心とする調査のほかに、パリにて在留日本人の問題を考えたが、25年度にはあらたな課題として異質な文化や状況下における文学的想像力の問題を付加して、考える必然を痛感した。明治期以降の海外紀行・旅行記というジャンルの基礎には移動、流通、交換といった問題項が埋め込まれているが、その原理論的なアプローチを考慮した研究進行を本年度には試みた。
平成25年10月18日から20日までポルトガル・マデイラ大学にて開催された International conference"( dis)memory of Disasterはまさしくそうした概念を補強するにふさわしい国際会議であったが、災禍や災害という悲劇と人々の強制された移動や移住・移民が生産するテクストをいかに我々は呼んでいくかという問題がここで提起された。続いて25年11月6日は立命館大学国際言語文化研究所主催でスイス在住の作家、詩人、翻訳家であるイルマ・ラクーサ氏と作家・多和田葉子氏による移民・ 移動と文学に関する朗読、および対話の催しを行った。
平成26年3月7日には、国文学資料館との共催で明治期とラベルラティングを中心とする研究会を実施した。
また、同月29日には、国内外の若手研究者を中心とするトラベルライティングに関する国際ワークショップを開催した。特に、言語、国籍、アイデンティティ の異なるテクストを付き合わせることによって複雑な植民地状況や、テクストの位相が立体的に浮かび上がってきたこと は、今回の大きな収穫である。
このほか、年間を通して明治期以降のトラベル・ライティング関連資料の収集・整理、目録化を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

昨年度に続いて実施者の体調不良、および家族介護などによって若干遅れている。今、積み残しているのはフィリピン、はじめ東南アジア諸国における明治期以降の言説とトラベルライティングの相関調査であるが、特に本年度は当該国の政情不安定などもあり、進行が遅れた。次年度最終年度の目標としたいが、政情が依然落ち着かないようであればこの部分は調査を再考したいと考えている。また研究会、および関連のゲストを招聘した講演会は順調に進行した。海外調査は特にポルトガルの国際会議への出席がかない、理論的なバックアップができた。往路、イスタンブールを一日だけ訪れ簡単な調査を行ったが、中近東への視点をオリエンタリズムとの関連からの繰り入れなければならないと考えた。次年度の課題としたい。

今後の研究の推進方策

トラベルライティングの基礎データとなる書籍目録を作成しているが、できれば最終年度の次年度にはこれを用いた研究会を企画したいと考えている。本年度は海外調査に加えて少し大きな規模の国際会議を開催することを目標としたい。これまで各地のさまざまな日本研究者との交流の中で、トラベルライティングの重要性に同意して協力を約してくれた人たちとのネットワークを用いて、今後のテーマを決定していきたいと考えている。トラベルライティングという文学形式、叙述形態の意味を考え、その概念を理論的に考えていくことを目指したい。
26年度は8月にクロアチア、10月パリ、11月台湾にての学会等の参加・発表が予定されているが、この機会の前後を用いて調査を行う。また以後の問題としてこの問題系を課題とする研究状況を促進していくためのネットワークを作っていきたいとも考えている。同時に書籍としての発刊も計画のうちにおきたい。

次年度の研究費の使用計画

当初計画の変更により旅費等の支出が出来なかった。また一部書類不備のため海外旅費の当該年度執行ができなかった。以後このようなことがないように細心の注意をもって書類を整備したい。
昨年度執行できなかった旅費等の執行、および当該年度の実施を見送った調査の実施。また国際コンファレンスの開催に伴う諸費用の再設定を行い、より有益な意義高い会議にブラッシュアッップしていきたい。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 生きることの自責―原爆文学を考える―2014

    • 著者名/発表者名
      中川成美
    • 雑誌名

      立命館大学『言語文化』

      巻: 25巻2号 ページ: 39-42

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 林芙美子の詩的精神―抒情の発見2014

    • 著者名/発表者名
      中川成美
    • 雑誌名

      現代詩手帖

      巻: 2014年4月号 ページ: 78-82

  • [雑誌論文] SF的想像力と文学―笙野頼子の冒険2013

    • 著者名/発表者名
      中川成美
    • 雑誌名

      論究日本文学

      巻: 99号 ページ: 1-14

    • 査読あり
  • [学会発表] クイアリーディングが拓くもの(ディスカッサント)

    • 著者名/発表者名
      中川成美
    • 学会等名
      日本比較文学会
    • 発表場所
      名古屋大学(愛知県名古屋市)
  • [学会発表] Literary memory of disaster(ディスカッサント)

    • 著者名/発表者名
      中川成美
    • 学会等名
      memory of disaster,Madeira Univerrsity international conference
    • 発表場所
      Madeira University(ポルトガル)
  • [学会発表] 見える風景・見えない風景―カズオ・イシグロと原爆文学―

    • 著者名/発表者名
      中川成美
    • 学会等名
      に本比較文学会関西支部大会
    • 発表場所
      徳島大学(徳島県徳島市)
  • [学会発表] テクスト・ジェンダー・文体―日本文学が翻訳されるとき― 司会。ディスカッサント

    • 著者名/発表者名
      中川成美
    • 学会等名
      第37回国文学資料館国際研究集会
    • 発表場所
      国文学研究資料館(東京都立川市)
  • [学会発表] he End of Women’s Literary Film: Naruse Mikio’s Hourouki (1962) and Imamura Shōhei’s Nippon Konchūki (1963)

    • 著者名/発表者名
      中川成美
    • 学会等名
      Kinema Club
    • 発表場所
      ハーバード大学ライシャワー記念センター(アメリカ合衆国)
  • [学会発表] Nature as a Problematic concept in Japanese Literature; Looking for Reality

    • 著者名/発表者名
      中川成美
    • 学会等名
      ベネティア大学国際シンポジウムRethinking of Nature
    • 発表場所
      ベネティア大学(イタリア)
    • 招待講演

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公開日: 2015-05-28  

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