すべての植民地主義的帝国は、それぞれに「帝国文学」のシステムを備えていた。そのなかには、大英帝国やスペイン・ポルトガル・フランス・ロシアのように旧植民地の政治的独立後も「帝国文学」の形式を継承する「語圏文学」を持続させているものもあれば、日本やドイツのように「帝国文学」のシステムそのものの解消を余儀なくされたケースもある。そうした「世界文学」の全体像のなかに、「帝国崩壊」前の日本語文学を位置づけることに重きを置いた研究であった。その成果の一部として『バイリンガルな夢と憂鬱』(人文書院、2014)を刊行したが、これは「帝国」の周縁部に共通して見られた「バイリンガリズム」に注目した著書である。
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