本研究は語彙素単位の形態論を用いて派生諸現象の共時的・通時的分析を行った。扱った現象は広範囲にわたり、派生プロパーの現象のみならず、統語論と形態論の相関、語用論と形態論の相関、言語接触の現象、文字という現象も含まれる。結果として2つの仮説を導いた。 ①品詞を変える派生には2種類がある。1種類目はtranspositionもしくは統語構造上の機能範疇に対応するものである。2種類目はそれ自身が語彙範疇を持つような接辞によるものである。②人間の言語能力としての形態論の役割は、意味と形の間のマッピングの処理にある。そのような関数的機能は形態論のみならず、人間の言語活動の様々な領域に見出すことができる。
|