研究課題/領域番号 |
24520418
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宇都木 昭 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 准教授 (60548999)
|
研究分担者 |
五十嵐 陽介 広島大学, 文学研究科, 准教授 (00549008)
佐々木 冠 札幌学院大学, 経営学部, 教授 (80312784)
|
キーワード | 音声学 / 音韻論 / VOT / イントネーション / 方言 / 社会言語学 / 韻律 / 無アクセント |
研究概要 |
本研究は,共通語と大きく異なる音韻体系を持つ方言が共通語圏と近接しているとき,方言圏にどのような変異が生まれ変化するかを,音声学・音韻論的側面から明らかにすることを目標として掲げた。具体的には,茨城県の方言を対象として設定した。 2013年度には茨城県の4地域(県北,県央,県南,県西)の老年層を対象として発音の調査を行った。これをふまえ,2014年度には音響的な分析をすすめた。とりわけ注目したのは,有声破裂音のヴァリエーションである。先行研究においても知られているように,日本語の有声破裂音には声帯振動が破裂に先立つもの(以下,prevoicing)と,破裂よりやや遅れて声帯振動が開始するもの(以下,short-lag)という二つの変異形がある。先行研究では,日本の方言の多くにおいて前者の変異形が優勢であるのに対し,東北地方では後者が優勢であることが知られている。さらに,茨城県においては,県西以外の地域で後者が優勢であるのに対し,県西では前者が優勢であることが知られている。今回の分析の結果により,prevoicingが優勢な地域とshort-lagが優勢な地域の分布を明確にすることができた。すなわち,県西において常にprevoicingが優勢なわけではなく,実際にはprevoicingは県西のごく一部においてのみ優勢であることが明らかになった。以上の結果を,2014年9月に開催された日本音声学会全国大会において発表した。 さらに,県西におけるprevoicingとshort-lagの分布をさらに詳しく調べるため,2014年11月から12月にかけて,坂東市と猿島郡境町において追加の調査を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
破裂音のヴァリエーションの分布が先行研究の指摘よりも複雑な様相を呈していることが研究の過程で明らかになり,その複雑な様相を明らかにすべく当初の予定よりも多くのデータを集めることにした。データ量の増加に伴い,分析に当初の予定よりも多くの時間がかかっている。そのような中,破裂音のヴァリエーションの分析を優先してきたため,それ以外のイントネーションや声質の分析が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
イントネーションや声質の分析を進めるため,分析補助者を雇用し分析を進める予定である。また,prevoicingが優勢な地域のデータを得るため,利根川以南の埼玉県・千葉県での調査を予定している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者が所属をかわって1年目であったため,データ分析補助作業者の確保に難航し,人件費が当初の予定よりも少なくなった。また,国際会議での発表をとりやめたことも次年度使用額が生じた理由の一つである。 データ分析補助作業者を雇用するための費用にあてる予定である。
|