研究課題/領域番号 |
24520419
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
田端 敏幸 千葉大学, 言語教育センター, 教授 (00135237)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 借用語 / 音節 / モーラ / OCP / 最適性理論 / アクセント |
研究実績の概要 |
ピッチアクセント言語として、古典ギリシャ語、ラテン語で観察されている現象を検討して、日本語との対照をおこなった。特に、ギリシャ語における前接辞(enclitic)が引き起こすアクセント型については、モーラと音節の二つを利用してアクセント型の記述をおこなわなければならないことを確認した。これは日本語のみならず、西洋古典語も「モーラ数え・音節言語」であるということになる。具体的には、do'oron”"gift" のような名詞に前接辞 tis "certain"を付加すれば do'oro'n-tis のように領域内に二つのアクセントがマークされるのがギリシャ語の特徴である。これは前接辞のもつアクセントを先行する語に実現させるということで理解できる。しかし、 lo'gosのような語に前接語を付加する場合には前接語のアクセントは表面に現れない。つまり *lo'go's-tis は許容されないわけである。これは「アクセントの衝突回避」という仕組みが機能しているということで説明ができる現象である。「前接語」はそのアクセントをできるだけ先行する語に担わせようとする性質をもつわけであるが、その結果としてアクセント衝突が発生するような場合には前接語のアクセントは表面に現れないということになる。これは日本語における助詞「まで」などのふるまいを思わせる現象である。「まで」は単独では用いられない語で、その前にある語が平板式(ピッチの下降がない)場合にのみアクセントをとって表面に現れることが知られている。このような現象を基にして類型論的な研究成果にむすびつけ、第10回音韻論フェスタ(3月20-22日:熱海KKR)で「前接語が引き起こすアクセント型について」として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
おおむね順調に進展しているが、これまで口頭発表したものをまだ論文として完成させていないので、今年度はそれを仕上げることが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
これまで口頭発表した内容に検討を加え、論文として完成させる。特に、類型論的な観点からの分析に焦点をあてたいと考えている。ピッチアクセント言語にみられる現象を西洋古典語にも観察を広げて類型論的な一般化をめざしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に近い3月20日―3月22日に、所属している研究会が主催する音韻論フェスタが予定されていたため、その出張旅費用に概算で5万円ほど残しておいたが、結果的に、1万7千円ほどが残った。
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次年度使用額の使用計画 |
この金額は学会旅費として次年度に使用する予定である(大阪、名古屋といった地域で学会が開催されるため、旅費がやや多めに必要になることが予定されている)
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