伝統音楽(特にとなえうた、わらべうた)におけるアウフタクト(弱起のリズム=Auftakt [独], Upbeat [英])の生起は、表層レベルの強勢の有無に起因する。よって強勢システムに立つ英語の場合、このリズムが頻繁に観察される一方で、日本語や北京語の場合、稀にしか観察されない。日本語はピッチシステム、北京語は声調システムに立つ言語であり、表層における強勢が存在しないからである。ベトナム語の場合は変則的である。この言語は、北京語と同様に声調言語であるにも関わらず、となえうた・わらべうた中にアウフタクトが頻繁に生起する。この結果は、ベトナム語の表層に強勢が存在する可能性を示唆するものである。
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