研究課題/領域番号 |
24520423
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
綾野 誠紀 三重大学, 人文学部, 教授 (00222703)
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キーワード | 統語論 / 受動文 / 日本語 / 中国語 / タイ語 |
研究概要 |
平成25年度は、前年度における中国語の受動文に関する研究を基に、タイ語の受動文の統語構造に関する詳細な検討を行った。受動形態素thùuk を用いた受動文の統語構造に関する研究は一定数あるものの、対象句の移動の有無、動作主句の統語特性を含め、不明な点が多い。そこで、本年度の研究では、照応表現、数量詞、否定極性表現等を用いることにより、受動文の統語構造について検討した。文献調査だけでは十分なデータを得ることが困難である為、平成24 年度の予備調査に引き続き、タイのマヒドン大学アジア言語文化研究所において調査を行った。同研究所のIsara Choosri 氏及び大学院生の協力を得て、タイ語受動文に関するデータを収集した。さらに、タイ語受動文と中国語受動文に関する比較統語論の視点からの分析に基づき、両言語の受動文の統語面での類似点及び相違点、特に、受動形態素の特性に関する考察を行った。また、タイ語と中国語の受動文に関する比較統語論の視点からの成果を、マヒドン大学アジア言語文化研究所の言語学コロキアムにおいて報告し、参加者から、データ及びその分析に関する有意義なコメントを頂くことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タイの国内事情悪化により、調査及び発表の機会が限定されたため。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の前半は、さらなるデータ収集・調査を実施し、後半では、3年間の研究の総括を行う。日本語・中国語・タイ語の受動形態素のもつ特性の類似点・相違点を明らかにし、3言語の受動文の統語構造を決定付けていると考えられる受動形態素を構成する種々の素性について考察する。また、受動文の派生に関わる操作に関しても検討し、統語部門における計算処理研究への示唆を考察する。3年間を通じて収集・整理した日本語・中国語・タイ語の受動文データについては、すべてローマ字表記に変換し、さらには英語逐語訳及び英訳を付した上で、データベースを構築する。その際、中国語及びタイ語の母語話者に最終的なデータのチェックを依頼する。研究成果は、国内・国外の学会において報告すると同時に、タイ語と中国語の比較統語論の視点からの成果は、タイ及び中国語の母語話者が多く集まる研究会においても報告し、最終的な評価を、関係する研究者から頂く。
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次年度の研究費の使用計画 |
タイの国内事情の悪化に伴い、調査の期間を短縮したため。 タイにおける調査旅費に充当する予定である。
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