研究課題/領域番号 |
24520424
|
研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
板東 美智子 滋賀大学, 教育学部, 教授 (40304042)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 日本語心理動詞 / 出来事名詞 / 主語 / 自分 / 後方照応 / 話者コントローラー / アスペクト補助動詞 / 活動動詞 + かけ |
研究実績の概要 |
本年度は、主に、以下の二点について研究を行った:
1. 日本語の心理動詞が主語位置にとる出来事名詞の中に「自分」が存在する例で、その「自分」の先行詞決定の振る舞いが不規則な例を取り上げた。例えば、「自分iの噂が花子iを驚かせた」と「自分?i/jの意見が花子iを驚かせた」の例における、「自分」の解釈の違いを「「自分の」出来事名詞」という名詞句の統語構造と「花子を驚かせる」の統語構造との構成から束縛関係を分析した。
2. 動詞のアスペクト分類において、「活動」に分類される動詞は、通常、始まりと終わりを示さない均質な行為や活動の連続と特徴づけられているが、Krifa (2012) はその行為や活動を複数のベクトルの集合と仮定している。本研究では、ある日本語のアスペクト補助動詞がこの一つ一つの活動のベクトルに付加している可能性を指摘した。典型的な例は、活動の最初のベクトルに付加していると思われる "V-kake" がある。この「かけ」が活動動詞の最初のベクトルに付加している可能性を示した。例えば、「歩きかける」「走りかける」「回転しかける」等である。さらに、活動や行為が観察できない心理動詞にも付加させてその状態変化未遂の意味がなぜ生じるのかを考察した。例えば、「驚きかける」等である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、照応詞「自分」と日本語の心理動詞の関する意味的、機能的、統語的研究を発展させていくということであった。それについては、WAFL 10 @ MIT で一定の成果を発表することができた。さらに、その研究で用いた言語テスト V-kake 構文を観察する経緯で、V-kake 構文が「活動」アスペクト動詞が描く出来事を個別のべクトルの集合(Krifka (2012))として捉えなければ、その多義的意味の派生が説明されないことに気づき、アスペクト補助動詞「かけ」の研究にも発展した。以上より、本年度の研究は当初の計画以上に進展したと判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度(平成 27 年度)が本科研費の最終年度であるので、これまでの研究のなかから、以下の二件について、引き続き学会発表を行ったのち、総括として論文執筆の上、言語学分野の学会誌あるいは研究雑誌に投稿する予定である。 (1) 日本語心理使役動詞構文の主語位置に現れる「自分」の様々な照応関係について。 (2) 日本語自動詞(心理動詞含む)の活動アスペクトの精緻化と、アスペクト補助動詞「-かけ」や「-つつある」との構成生による多義派生のメカニズムの解明。
|
次年度使用額が生じた理由 |
謝金の合計額が見積もり金額より858円少なかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
最終年度の英文校閲の謝金に組み入れる。
|