本研究は、主に日本語の心理動詞構文の主語位置に現れる照応詞「自分」の解釈の問題を語彙意味論の枠組みで扱った。心理動詞構文の主語に再帰代名詞や「自分」が現れると後方照応が可能になる場合があり生成文法束縛理論の例外として1970年代から統語理論や機能文法の枠組みで分析がなされてきた。本研究では、これまでの分析案で扱いにくい出来事名詞句内の「自分」の話者視点と後方照応の相反する現象を示し、心理動詞の語彙意味構造と「自分」を含む名詞句内部の意味構造を生成語彙意味論の枠組みで形式化して、それぞれの構造の組み合わせの違いによって先行詞が話者になる場合と後方の名詞句になる場合のメカニズムを統一的に提案した。
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