研究課題/領域番号 |
24520426
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鄭 聖汝 大阪大学, 文学研究科, 講師 (60362638)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 包括的な言語類型論 / 普遍性 / 他動性のプロトタイプ理論 / スル型・ナル型 / 存在・出現・消失 / アジア諸語 / 英語 |
研究概要 |
本研究は他動性に関する二つの仮説――他動性のプロトタイプ理論(普遍性)と類型論的仮説(スル型言語とナル型言語)――の関係に焦点をあて、両者の整合性の可否を検証し、より包括的な言語類型論の枠組みを構築しようとするものである。この目的の達成のために、本研究ではビデオ映像による心理学的な実験手法を用い、日本語(ナル型)と英語(スル型)の他に、類型特徴の異なるアジア諸言語(韓国語、中国語、タイ語、マレー語、マラーティー語、テルグ語など)の実際の発話資料を調査する。 2012年度は、予定通り9月と2013年3月の二回にわたって南イリノイ大学で二種類(ビデオ実験とイラスト実験)の調査を行い、英語母語話者約170名分のデータ-が得られた。また、2013年1-2月にはインド・ハイデラバドのEFL大学を拠点に、EFL大学、ハイデラバド大学、ウルドゥー語学校などでテルグ語、ヒンディー語、ウルドゥー語の調査を行い、計315名分のデータを得ることができた。日本語も現在約70名分ほどのイラスト実験のデータが得られている。現在はこれらのデータの入力と翻訳作業を行っており、この作業が終わった段階で、統計・分析に移る段取りである。 特に今回の調査では、「中国語における消失を表す存現文について」(下記の「学会発表」参照)の研究成果を受けて、映像実験に加えイラスト実験も新たに導入し、調査を行った。ヒンディー語とウルドゥー語も当初の計画では調査対象に入っていなかったが、インド・アーリア語族とドラヴィダ語族(テルグ語)との間に表現の類型に相違が見られるかどうか調べる必要があり、今回調査対象に加えた。この調査により、所有・出現・消失を同じ構文パターンで表現する言語(中国語、韓国語)と、消失を別扱いにし、存在と出現だけを同じ構文パターンで表現する言語(英語)の類型が明らかになる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、実験調査として映像による調査のみ予定していたが、それに加え、14パタンのイラスト実験も導入した。さらに各言語毎に100名分を超える大量の言語データも得られている。また当初の計画では予定していなかったヒンディー語・ウルドゥー語も今回調査できたことは、当初の計画以上の進展であると考えられる。これにより、映像実験調査で目標にしていた他動性のプロトタイプ理論と言語類型論仮説の関係だけでなく、存在・発生・消失に関する言語表現についても類型論的な観点から新しい提案が期待できる。これが成功すれば、アジア諸語を中心とした包括的な言語類型論の枠組みの構築という目標により近づくものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度も前年度同様、二種類(映像とイラスト)の実験調査を行う予定である。今回の調査対象の言語はタイ語、中国語、韓国語、日本語(不足分)の4言語である。実施期間は夏休み(7-8月ごろ)を利用してタイ語の調査を行い、冬休み(12月ごろ)の期間中には中国語の調査を行う。イラスト実験調査を加えたことにより、日本語と韓国語の調査も行う必要が生じているが(映像実験はすでに終わっている)、日本語は不足分を補うだけなので、5月中に完了を目指す。韓国語は9月にソウル大学で調査を行う予定である。今のところ、研究の推進に置いて特に大きな問題はない。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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