研究課題/領域番号 |
24520426
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鄭 聖汝 大阪大学, 文学研究科, 講師 (60362638)
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キーワード | 実験調査 / 他動性 / 言語類型 / 存在・出現・消失 / 日本語・韓国語 / 中国語・タイ語 / ヒンディー語・テルグ語 |
研究概要 |
本研究は他動性に関する二つの仮説――他動性のプロトタイプ理論(普遍性)と類型論的仮説(スル型言語とナル型言語)――の関係に焦点をあて、両者の整合性の可否を検証し、より包括的な言語類型論の枠組みを構築しようとするものである。この目標達成のために、昨年度行った英語・ヒンディー語・ウルドゥー語・テルグ語の調査に引き続き、今年度は日本語・韓国語・タイ語・中国語を対象に実験調査(映像実験とイラスト実験)を行った。映像実験では意図性・非意図性と自動詞表現・他動詞表現の相関を検証し、イラストでは存在・出現・消失の現象を取り上げ、特に消失現象が表す状況を各言語ではどのように表現するか、その構文パタンは類型論的に有意義な特徴が見られるかどうかを調査した。 今年度の実施状況は4月に日本語母語話者128名分(大阪大学)、5月には韓国語母語話者100名分(ソウル大学)、また8月にはDhurakij Pundit Universityでタイ語母語話者109名分と12月には北京連合大学で中国語母語話者115名分のデータをそれぞれ収集することができた。これで各言語当たり約350枚から500枚のデータシートを収集したことになる。現在ローデータの入力はすべて完了し、注釈・翻訳も90%ほど進んでいる。統計処理のためのデータ分析も順次行っている。 これと並行して昨年度末に行ったヒンディー語・テルグ語のローデータのローマ字入力・注釈・翻訳作業も同時に行った。特にテルグ語は熊本大学の児玉望教授と海外共同研究者の柴谷方良教授から情報提供をいただき、今年の2月には3週間ほどEFL大学で直接フィールド調査も行った。ヒンディー語・中国語・タイ語の分析は、大阪大学の留学生の協力を得て分析を進めている。来年度マレー語の調査が終われば、目標としていた調査は一応終了する。データが出そろった段階で、国内外で成果の発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
より包括的な言語類型論の構築のために、昨年度、当初の計画にはなかった存在・発生・消失の意味要素をデザインした14種類のイラスト実験を新たに調査項目として導入し、また調査対象の言語も当初の計画ではなかったヒンディー語とウルドゥー語を含めたことにより、翻訳や分析作業には多少時間がかかっている。しかし、現在調査が完了した8言語のうちウルドゥー語を除く英語・ヒンディー語・テルグ語・日本語・韓国語・タイ語・中国語のデータ分析はほぼ完了の段階であり、おおむね順調に進んでいる。これにより、他動性プロトタイプだけでなく、存在・発生・消失に関する言語表現についても類型論的な観点からの新しい提案が期待できるようになると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は本研究の最終年度であり、計画通り実験調査の対象言語はマレー語のみ残している。前年度同様、二種類(映像とイラスト)の実験調査を行う予定であり、調査期間はマレーシアの大学で学期が始まる9月末ごろを予定している。現在マラヤ大学を中心に協力者と連絡を取り合い、実験調査の環境を整備しつつある。これまで調査した8言語のすべての分析も来年度完成を目指している。今のところ研究の推進に置いて特に大きな問題はない。また今年度は全てのデータが出そろうので国内外の言語学会への成果発表にも積極的に取り込む予定である。
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