本研究課題の「項の具現化と構文形式に関する総合的研究」は本年度が初年度にあたり、特に、研究基盤を整えることに力点を置き、理論的考察のための基盤づくりや研究目標達成のために必要となる基礎的な研究を進めた。具体的には以下のように本年度の計画を進行させた。まず、構文交替現象を的確に記述できる理論開発のために、文献の調査などにより既存の理論的な枠組みの問題点を検証し、整理した上で、理論的に必要な道具立てはなにかという検討を行った。実証的な側面と理論的な側面の双方から、既存の統語理論における、理論的構築物の長所・短所や問題点について検討するために、日本語および英語を中心に基本となるデータの収集と整理を行い、いくつかの構文の比較対照を行った。本年度は,特に,主語の格標示とその意味関係の検討および,格標示の異なる主語の構造位置がどこになるのかについて,経験的なデータの発掘およびその検討を行った。イギリス,ベルギーおよびアイスランドに出張し、それぞれ学会あるいは大学が主催したワークショップ等で研究発表を行った。それ以外にも,オランダの大学を訪問し,関係する研究課題について研究する他の研究者との意見交換および研究発表を行うこともできた。国内においては,国立国語研究所で開催された国際シンポジウムにおいて,日本語の項交替に関する研究発表およびMorphology and Lexicon Forumにおいても研究発表を行った。以上のように、初年度は着実な研究の進展と成果が得られたと考えている。
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