研究課題/領域番号 |
24520430
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大津 隆広 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (90253525)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 関連性理論 / 手続き的情報 / 照応表現 / 省略表現 / 語用論的意味拡充 |
研究概要 |
(1)当該年度の研究の具体的内容 本研究は、言語形式や構造が発話の意味解釈に関わる心的メカニズム、および意図された発話解釈への手続き的制約の差異を解明することを目的とする。当該年度において、そのような異なる言語形式や構造の中で、動詞句照応、直示的表現、および省略表現について、それらが符号化する手続き的制約の差異の比較検討を行った。深層照応/表層照応という伝統的な二分法によれば、深層照応である動詞句照応は、直示的表現と同様に、非言語的コンテクストに存在する対象を直接指示できると説明されてきた。しかし、言語形式や構造が異なるため、符号化された意味(つまり、発話解釈へ導く語用論的推論のタイプ)は異なると考えられる。本研究では、直示的表現は物理的対象に直接的に注意を向けさせるという手続き的意味を符号化するのに対して、動詞句照応のような照応表現は指示対象の心的表示に注意を向けさせるという手続的意味を符号化すると結論づける。一方、照応表現と省略表現は異なる言語形式と構造をもっているが、ともに心的表示をもとに指示対象あるいは省略要素を確定するための手続的意味を共有している。両者の違いは、確定への語用論的推論の起動が、前者は意味的糸口、後者は統語的糸口に基づくことにある。 (2)研究の意義と重要性 これまで、言語表現の形式と意味との関係についての考察は、それが概念を符号化してはいないという見方を除いては、あまり試みられてこなかったと言える。関連性理論が提示する手続き的分析の利点のひとつは、言語形式や構造がそれらを含む発話の解釈に貢献する推論への制約について、細やかな差異を説明できる点にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、意味が最小限に符号化され、その解釈には語用論的推論が最大限化される言語表現や構造について、手続き的制約の差異を考察することである。初年度は、その研究目的を遂行するための2つの基本的な考察を行った。一つは、言語表現や構造が符号化する意味の考察への手続き的分析の有効性を探ることである。Blakemore (2002: 98) の「手続き的制約は、言語表現や構造がそれを含む発話の解釈に関わる推論の情報を符号化するあらゆるやり方を捉えるものである」という議論は、手続き的制約が言語表現の構造的差異が符号化された意味とどのように関係するのかを実証するための理論的枠組みとなる。これは、「言語表現が符号化する手続きー手続き的分析の利点」(『言語文化論究』第30号、1~11頁、2013年)において、詳説されている。もう一つは、具体的な分析の第一歩として、照応表現、省略表現、直示的表現が発話解釈への語用論的推論に与える制約の違いを分析することである。言語コーパスや映画の会話からデータを収集し、これは『発話解釈の語用論』(九州大学出版会、2013年)の第7章においてまとめられている。さらに、初年度のこうした研究成果をもとに、2013年9月にデリー(インド)で開催される、第13回国際語用論会議(International Pragmatics Conference)にて、口頭発表(題目 "Procedures Encoded by the Structure of Linguistic Expressions")を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下のような方策で研究を継続、発展させる。 (1)認知語用論(関連性理論)関連図書をもとに言語形式と手続き的制約の関わりについて、認知科学関連図書をもとに、認知理論からみた心的プロセスについて、考察を行う。また、言語学関連図書をもとに、言語学全体の中での本研究の位置づけを行う。 (2)言語形式が符号化する手続き的制約を中心に、Bibliography of Pragmatics Onlineを用いて、関連する語用論の文献を検索、収集し、Handbook of Pragmatics Onlineを用いて、語用論のトピックの確認を行う。 (3)小学館コーパスネットワークが提供するBNC (British National Corpus)、およびCollins Wordbanksの中の特に話し言葉のサブコーパスや映画の会話などから、照応表現や直示的表現、省略表現の例をさらに収集し、新たに自由拡充表現や文断片的発話の例を収集する。 (4)それぞれのデータの整理、分析において、生起するコンテクストを言語的コンテクストと非言語的コンテクストに区別し、発話解釈の心的プロセスに関わる手続き的制約について、コンテクストを考慮した分析を行う。また、意味拡充のプロセスおよび拡充される要素について明確化する。 (5)口頭発表や資料収集を目的とする国内外の出張を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究費は、2013年度の研究計画として、9月にデリー(インド)で開催される国際語用論会議での口頭発表のための海外渡航費に充当される。
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