研究課題/領域番号 |
24520430
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大津 隆広 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (90253525)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 関連性理論 / 言語構造 / 手続き的制約 / 発話解釈 / 語用論的推論 / 心的表示 |
研究実績の概要 |
(1)当該年度の研究の具体的内容 本課題は、言語の形式や構造が発話の意味解釈に関わる心的メカニズム、および意図された発話解釈への手続き的制約を解明することを目的とする。前年度は、これまで同じ枠組みで説明されてきた深層照応(語用論的に制御された照応)と直示的表現がそれぞれ符号化する手続き的制約の差異を考察した。当該年度は、発話環境に見られる種々の談話標識や省略表現のデータの収集と分析を進めた。この分析において、言語表現や言語構造の手続き的制約はそれが含まれる発話の解釈に関わる推論のタイプを詳細に説明できるという関連性理論の見方をもとに、類似の談話標識や種々の省略現象においても、同様の弁別的・示差的説明が可能であるという考察を行なった。省略現象においても、そのタイプが異なるために符号化された意味(つまり、発話解釈へ導く語用論的推論のタイプ)は異なると考えられる。動詞句削除や自由拡充、文断片的発話などのさまざまなタイプの省略現象が心的表示をもとにした語用論的推論をどのように起動させるのか考察を継続する。 (2)研究の意義とその重要性 これまで、省略現象における意味の補充や拡充のプロセスについてあまり考察がなされていないと言える。関連性理論が提示する手続き的制約の利点として、意味の補充や拡充がどのような心的表示に基づいて行なわれるのか、省略という言語構造がそれらを含む発話の解釈に貢献する推論への制約について、細やかな差異を説明できるであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
言語コーパス(British National Corpus、Collins WordBanks)や映画などから話し言葉や会話データの収集を行なって来たが、それらの収集に予定以上に時間がかかったために、研究全体のデータの分析と考察が思うように進まなかった。また、この一年を通して、共同出版や学会の招待発表の準備に時間をとられることも多かった。研究課題は今年度のなるべく早い時期にまとめ、成果発表を行ないたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は次のような方策で研究をまとめる予定である。 (1)言語コーパスの話し言葉のデータや映画の会話などから、データの収集を終了させる。 (2)これまでの照応表現や直示的表現の分析に加えて、文断片的発話や自由拡充などのその他の省略現象のデータをもとに、省略という構造に符号化された種々の手続き的制約について考察を行なう。 (3)データの整理と分析において、生起するコンテクストを言語・非言語に区別し、意味拡充のプロセスおよび補充・拡充される要素を明確化する。 (4)関連性理論の関連図書などをもとに言語形式と手続き的制約の関わりについてさらに考察を深め、認知語用理論から見た言語表現や言語構造の理解に関わる認知プロセスをフォーマライズし、成果発表を行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
2013年度に著書の出版のための支出を考えていたが、別の予算から出版を行なったために2014年度以降に未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年7月26~31日にベルギーのアントワープ大学で開催される第14回国際語用論会議 (14th International Pragmatics Conference)にて口頭発表(7月28日)を行なうための渡航費・滞在費、さらに2016年春(予定)の共同出版のための研究経費として使用する予定である。
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