本研究の目的は、研究代表者が構築中の日本語フレームネット(JFN)を、語彙の意味情報に加え、構文の意味情報をも含む語彙・構文複合言語資源へと発展させることであった。具体的には、文全体の意味に、語彙素の意味以外にどのような文要素の意味が関与しているかを明らかにし、それらを記述して言語資源とする方策を探ることであった。意味記述の枠組みとしてフレーム意味論を用い、語彙素以外の文要素の意味も語彙素の意味と同様に記述した。コーパス上の文の意味を分析しその結果を蓄積することで、将来的に自然言語処理技術や日本語学習者にとって有益な言語資源とすることを目指した。 言語分析に関しては、日本語構文の洗い出しを行なった。さらに、それぞれの構文の意味情報を分析した。その結果を例文への構文アノテーションとするためには、どのような情報を記述すれば良いのかを検討した。それらを基に構文の意味情報とフレーム情報の関係について考察を深めた。その結果、英語フレームネット、スウェーデン語フレームネット、ポルトガル語フレームネットにおけるこれまでの関連研究では、構文アノテーションの範囲が必ずしも明確に定義されてきていなかったことを指摘し、新たに構文アノテーションの範囲を定義した。これらの研究成果を、3編の国際会議口頭発表、1編の国内学会口頭発表、1編の論文として発表した。 システムに関しては、ツールを使ってアノテーションを行なうための準備が整った。データの整合性チェックのためのプログラムが完成した。
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