研究課題/領域番号 |
24520438
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研究機関 | 東京家政学院大学 |
研究代表者 |
橋本 文子 東京家政学院大学, 現代生活学部, 准教授 (20237928)
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キーワード | 音声学 / 音韻論 / 方言 / 音変化 / 言語学 |
研究概要 |
平成25年度は、東北方言に特有に見られる音声的特徴を探るため、先行研究を参考にそれらの特徴を捉えるための質問項目を作成し、用意した調査項目に答えていただく形式で青森県の数ヶ所で方言音声の録音調査を行った。前年度は青森県や岩手県の県立図書館や市立図書館、大学の図書館等で文献や資料を調査したり、CDなどの音声データを聞き、東北方言の特徴について調査確認することが主であったが、平成25年度はそれらで得た知識や情報を基に実地調査を行っていった。 実際に音声録音を行う際には、調査者自身も東北出身であることを告げて、被験者の自然発話をできるだけ促すようにコミュニケーションをよく取るように心がけ、調査項目とともに自然発話についても許可を得た上で録音させていただいた。 調査地点としたのは、青森県八戸市、青森市、弘前市であり、全体として小学校4校、公民館及び市民館4ヶ所を訪問し、若年層被験者として小学生10人、高年層被験者として70歳代以上の方10人、中年層被験者として百貨店勤務の方2人、市役所勤務の方2人の合計24人の方言音声を録音させていただいた。また、青森市では地元の劇団の方々が津軽弁を使って行う劇の練習の様子を見させていただき、地元の方々が方言に対して愛着と誇りを持っていることを実際に肌で感じることができた。 青森県での方言音声録音調査では、全体としてこころよくご協力をいただくことができた。小学校では調査を行うまでにある程度の日数と手続きが必要な所もあったが、協力していただいた小学生は皆伸びやかで協力的であった。高年層の方々の中には方言が廃れつつあることを危惧する声も聞かれることがあったが、時代とともに言葉は着実に変化していき、変化は避けられないことであると感じた。また、高年層の方々との会話は得るところが多くあった。今後は、中年層の被験者をもう少し増やしていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は方言調査のための調査項目を用意して、各調査地点で方言音声録音調査を行っていった。先行研究に基づいて調査項目を作成したが、若年層として小学生の被験者を対象とした調査では、現在の小学生にとっては既に使われなくなり、身の回りからは消えてしまった単語や表現などがあることがわかり、調査項目に修正が必要であることに気づかされた。 調査の手続きについては、小学校では調査依頼をしてから実際に調査を行えるまでに数ヶ月を要する場合もあった。公民館などでは調査に協力していただける方に声をかけていただいたり、調査場所を提供していただくなどのご尽力いただいた。また、被験者を探す際に、中年層の被験者はなかなか見つけるのが容易ではないということも実感した。調査を行うにあたっては、直接こちらからお願いした公民館もあるが、市役所などの行政機関や詳しい方を通して進めた方が円滑にいく場合があるようである。 平成25年度は当初の予定では青森県と岩手県の二県で調査を行う予定であったが、実際に調査を行ってみると思いのほか時間がかかることがわかった。それは、調査を単独で行っているため時間的にも作業的にも限界があるためであり、今後当初の計画通りに東北地方全体で網羅的に調査を行うのは困難であろうことが推測される。実地調査を行うことでデータは蓄積されつつあるが、その分析までにはまだ手が回っていないのが現状である。 調査を実際に行うことにより、調査のためにどれ位の手続きや準備のための時間を要するのか、また実質的に調査にどの位の時間が取れるのかを実感することができたので、今後は必要となるデータを分析する時間も加えて、全体の計画を練り直していく必要があるのではないかと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
達成度のところでも述べたように、実際に調査を行っていくと調査項目の修正が必要であることに気づいたり、また一人一人の被験者から学ぶことも多く、できるだけ時間をかけて調査を行いたいと考えるようになった。それとともに、方言調査の奥深さと地域による言葉の違いの不思議さを改めて感じている。 一つの県の中でも地域によりさまざまな違いが見られ、これほど交通が発達した時代でも方言がその地域に脈々と息づいていることが感じられた。それと同時に被験者の年代による違いに触れて、方言が時間とともに確実に変化していることを感じている。その違いをどのように正確に伝え、表すことができるのか、その方策についての研究も進めていかなければならないと感じている。 当初の予定では、一年に二県ずつ、四年間で東北地方全体を網羅的に調査していくことを計画していた。しかし、実際に調査を行ってみると、調査の時間がまとまって取れるのは夏休みの期間しかなく、学期中は時間的にかなりの制約がありまとまった時間を取るのは難しいことを実感した。そこで、網羅的な調査を行うことは実質的には難しいと考えられることから、調査地域をむしろ当初の計画より狭めて、より詳しい綿密な調査を行い、その中で実り多い結果を得られるように研究を進める方がよいのではないかと考え始めている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じている理由は、主に研究初年度であった平成24年度に多くの繰越金が生じていたためである。研究初年度であった平成24年度には、科学研究費採択の知らせを受け実際に研究費を使用できるようになったのは夏休み直前であったために、当年度は本研究に伴う研究費使用が遅れ気味に推移した。その後平成25年度には、計画に従い青森県の数ヶ所で実地調査を行い、それに伴って研究費使用も順当に推移しており、平成25年度単年では研究費使用はほぼ計画に近いものとなっている。 平成26年度には本研究も3年目になり、研究初年度の遅れを取り戻すよう努力しながら、方言音声の実地調査を進めていきたいと考えている。また、研究を進めていく上で必要となるであろうさまざまな協力を得るために、人件費や謝金などの使用を今後は考えていきたい。
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