研究実績の概要 |
本研究では、「すべての」や「ほとんどの」のような量化詞を含む文の解釈パターンを実験心理学的手法により調査した。 我々が以前行った研究(「談話・語用論的処理に基づく文理解メカニズムの実証的・理論的検討(平成18-20年度 代表:井上雅勝)」)で、主語か目的語のどちらかで量化表現が用いられると(例:すべての学生が/問題を/解いた/人に/礼を/言った)、両方で用いられなかった場合と比べ、文の再構築/再解釈効果(ガーデンパス効果)が減少するが、主語・目的語の両方で量化詞が用いられると(例:すべての学生が/すべての問題を...)ガーデンパス効果はあまり減少しないという結果が得られ、理論的考察を行なった(Kurafuji, et al. 2007, 井上他 2008、Kurafuji, et al. 2011)。 前回の実験設定では、被験者が刺激文に対して実際どのような量化解釈を行っているかということはわからなかった。そこで、今回我々は量化文がどのように解釈される傾向にあるのかを調査した。調査方法は、パソコン/タブレットに単文(例:ほとんどの生徒が机を片付けた)とそれに対する設問(1文につき最大13問、例:生徒に片付けられた机はひとつでしたか?)を示し、被験者(大学生268名)に「はい」か「いいえ」のボタンをクリックして答えてもらうというものである。我々はその回答の組み合わせで被験者が想起した量化解釈を同定した。その結果、主語・目的語の両方で量化表現が用いられると、グループとして解釈される傾向にあることがわかった。今回の調査結果を、前回のガーデンパス効果の結果に重ね合わせて解釈すると、個体に注目して量化解釈を行うか、個体ではなくグループとしてひとまとまりで解釈するかが、ガーデンパス効果の増減と関係している可能性があるということになる。
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