研究課題/領域番号 |
24520443
|
研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
楠本 紀代美 関西学院大学, 文学部, 教授 (50326641)
|
研究分担者 |
浦 啓之 関西学院大学, 文学部, 教授 (40283816)
|
キーワード | 形式意味論 / 機能範疇 / 格 / スラブ系言語 |
研究概要 |
楠本は日本語の第四種動詞と言われる動詞やそれに似た振る舞いをする移動動詞の主節と埋め込み節での特殊な振る舞いについて研究をすすめた。これらの動詞を形式意味論の枠組みで分析し、元来の意味的な相違が統語的相違となって現れ、一般的な動詞とは主節での振る舞いが異なることを理論的に解明した。この理論をJapanese Korean Linguistics 23で発表し、Kusumoto (2014)に論文としてまとめた。 浦は「動詞句と節の双方が意味的に内包するaspect(相)に関する情報が、どのような形で統語論的及び形態論的に反映されているのか」という問題について研究を行った。より具体的には、グルジア語において、動詞句の表すaspectの違いが、その目的語に現れる格接辞の変化となって表れることを突き止め、その統語的メカニズムの解明の研究を行った。また、ドラヴィディア諸語における与格主語構文と日本語の与格主語構文との差異について、動詞の意味特性が深く関与していることを突き止めた。さらに、上記2つの研究によって明らかになった統語メカニズムの共通点と相違点を理論的に観察することで、一般の人間言語におけるaspectの意味的・統語的差異が、どのように形態的差異になって表れるのかという大きな問題に関しても取り組んだ。 またスラブ系言語の研究は論文としてまとめるにはいたらなかったが、否定の属格現象の統語的特徴について文献調査を進めた。格現象の統語的側面と意味的側面を切り離さず、その相互作用の中で格交替を観察し、機能範疇の果たす役割をある程度特定することが出来た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本語の格交替や埋め込みvs主節現象については予定よりもすすんでいる。関西/東京方言の相違や類似点も明確になり、また動詞の分類による相違点も議論をつくした。一方スラブ系言語に関しては否定と法の意味的類似点に議論がとどまり、それが統語構造へどのように反映されるかについては理論的方向性が定まっていない。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度はこれまでの研究をまとめ、日本語とスラブ系言語のパラメトリックな差異について理論構築をはかる。楠本はKusumoto(2013)で発表した理論のスラブ系言語に関する部分を発展させ、特に否定の属格について研究する。浦は「人間言語におけるaspectの意味的・統語的差異が、どのように形態的差異になって表れるのか」という問題について、スラブ諸語にまで射程を広げた研究を主に行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
海外での学会発表を2回行う予定であったが、日程上次年度に行うことになったため。 海外での学会発表に加え、最終年度にあたって格現象の意味と統語についてのワークショップに充当する予定である。
|