本研究は、日韓対照言語学的な視点から、日本と韓国の映像メディアを考察・分析し、その言語表現の特徴を体系的に記述することを目的として行われた。中でも、フィクションジャンルの韓国語から日本語への翻訳過程に、キャラクタ性を際立たせるための意図的な改変が多く見られることを示し、その結果、原語の映像メディアには表れていない新しいキャラクタが訳語のメディア上で再創出される現象について検証を行った。しかし、こういった現象は、必ずしも「フィクションの翻訳」でのみ表れるものではなく、娯楽性が重視されるジャンルのメディアほど、番組制作者の企画意図が優先されやすく、そのため主観的な解釈が付加されやすい。とりわけ、バラエティ番組によく見られるコミックな文字テロップの処理には、笑いの誘導に効果的な娯楽性が追求されるという点で、制作者によるディスコース操作が入り込む余地が多分にある。よって、研究最終年度の26年度は、考察対象をバラエティ番組にしぼって、中でも韓国のバラエティ番組の文字テロップに制作者の関与が大きいことに注目して分析を続けてきた。具体的には、日本と韓国のバラエティ番組を分析対象とし、映像の編集過程で付加される文字テロップが、キャラクタの構築と強化を助長する道具として機能していることを、実例をもとに検証した。今後は、こういった娯楽性の高い映像メディアを中心に、そこに盛り込まれる制作者側の意図と、それに対する視聴者側の解釈を調査することで、さらに「コミュニケーション効果」という観点から「映像メディア言語」の具体像を示していきたい。
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