研究課題/領域番号 |
24520450
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
NARROG Heiko 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (40301923)
|
研究分担者 |
中本 武志 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (10292492)
小野 尚之 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (50214185)
真田 治子 立正大学, 経済学部, 教授 (90406611)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 意味論 / 言語変化 / 類型論 |
研究実績の概要 |
成26年度にも研究題目関連資料の収集及びデータベースの構築作業を続けた。研究資料として、200言語のデータベースを補う文法・語彙記述が入手でき、歴史変化に関する資料も入手した。分析においては、文法化と類型論の相互関係について先行研究に基づいて理論的な考察を行い、文法化が特定な言語の類型(とりわけ、特定な文法的カテゴリーの表現形式)に影響を与えることも、言語の共時的類型が文法化のプロセスに影響を与えることも、両方あることを明らかにして、8月にライプツィッヒのマックス・プランク研究所、そして2月に国立国語研究所でこのテーマについて発表を行った。また、意味変化の方向性についても検討を行った。通言語的データに基づいて、格が最終的に時間、因果、契機などの詞的機能と、主格、能格、対象、絶対格、といった極めて抽象性が高い意味機能へと変化することが判明し、話し手を間接的に指示する意味や談話中心化の一種と見ることが可能であると論じた。1月にその旨の論文を専門誌で発表することができた。日本語の自他動詞対に関して、現代語の自他動詞対のリストを完成し、関連する論文を国際的学術誌に投稿した。 通言語的な「格」データの自動計算と2次元的表示に関しては、多次元尺度法(Multi-Dimensional Scaling)による意味分析のプログラムの開発に関しては、今度、MDSでは思ったような成果を得られなかったのでワード法によるデンドログラムやクラスター分析を試みましたが、中にはクラスター分析のほうに可能性があり、今後の検討にも価すると判断した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料収集、意味変化の方向性、動詞の自他対については順調あるいは期待以上進んでおり、モダリティと格(MDS等による意味図の自動作成)については進度が期待を下回っている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度に引き続き、平成27年度にも研究題目関連資料の収集及びデータベースの構築作業を続ける(⇒物品費、謝金の使途)。平成24年度と平成26年度の間にも進度があったが、随時に研究資料の改善と更新を行う必要がある。分析においては、文法化に伴う言語形式の意味変化に関して、話し手中心的意味への変化、聞き手中心敵意意味への変化、談話中心的意味の変化の三つからなら、発話行為中心的意味への変化のモデル化を進める。そのため、特にモダリティ領域における通時的変化の更なる検討が必要である。また、ある論文集への投稿のために、文法化の形式的側面と意味的側面の相関関係についての研究も進める予定である。形式的な文法化は言語の類型との密接な関係にあるのに対し、意味・機能的変化はほぼ普遍的であるといえる。これをより明確にする必要がある。また、日本語の文法化の統語論的側面について、構文化理論を援用して考察を含める。さらに、普遍的方向性に反する研究として、形態面における「外適応」の解明にも取り組み、日本語において関連する変化の全てのケースを把握し、論文集のためにまとめる。同時に、生物学から言語学へ導入された「外適応」概念の言語学における意味の考察を深める。 「格」データの多次元尺度法(Multi-Dimensional Scaling)による意味図表示の開発も真田の協力で継続する。平成26年度には、クラスター分析などMDS以外の統計法による意味間の類似関係の表示を開発したが、その開発を続け、学会発表につなげる予定である。
|