研究課題/領域番号 |
24520452
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
永井 正勝 筑波大学, 人文社会系, 準研究員 (70578369)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 画像データベース / アノテーション付与 / TEI / XML / 文字学 / 写本 / 字形 / 言語記述 |
研究概要 |
本研究は古代エジプト語の神官文字資料を対象として,①文字画像を含めた言語データの作成,②リレーショナルデータベースを利用した画像ならびに言語データに対するWeb型検索プラットフォームの構築,③TEIに準拠したXML形式データの出力装置の開発を行うものである。初年度となる今年は,大英博物館所蔵写本BM EA10221を資料として扱い,①と②の作業に取り組んだ。①については,文字情報を作成した後に単語情報の作成に取りかかる予定でいたが,写本のページごとに文字情報と単語情報の作成を並行して行い,現在,全体の30%ほどのデータ作成が完了した。②の作業については筑波大学人文社会系の和氣愛仁の協力を得ることができ,当初の想定を大きく上回る検索プラットフォームを構築することができた。このシステムはApacheとPHPを用いて実装されており,画像処理にはZoomifyを利用した。このように既存のオープンソースを利用することにより,短期間でのシステム構築が可能となった。①と②の概要については国際学会であるJapanese Association for Digital Humanities, 2012 Conference (2012年9月16日-17日)で最初に発表し,有用な助言を得ることができた。また,情報処理学会の「人文科学とコンピュータシンポジウム(じんもんこん2012)」(2013年11月17日)において成果を詳細に発表したところ,ポスター賞を受賞することができた。また,ドイツのマインツで開催された古代エジプト語の神官文字の国際会議(2013年3月18日-20日)においても成果を公表し,高い評価を得ることができた。研究の方向性については,大英博物館古代エジプト・スーダン部局の学芸員リチャード・パーキンソン博士から助言を得ており,国際的にみても,有用な検索システムが構築されつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目標は言語データと画像資料を同時に検索することができるシステムを構築し,なおかつ検索結果をTEIに準拠したXML形式のデータで出力する装置を備えていることにある。この検索システムの構築に関しては,2013年度(第二年度)の後半に試作版を作成する予定であったが,研究協力者の和氣愛仁の協力を得て,2012年度(初年度)の秋に試作版を作成することができた。予定を大幅に上回るペースで研究が進展したばかりか,システムの内容も計画書作成当初より高度なものとなった。それゆえ,言語データの作成が第二年度の前半で終了すれば,第二年度の後半にはシステムの90%が完成することが見込まれる。ドイツで開催された古代エジプト神官文字の国際会議でシステムを紹介したところ,我々のようなシステムを作成しているプロジェクトは世界にも例がなく,それゆえ,本研究の成果は世界的にも新規な取り組みであると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度(第二年度)の前半に字形画像を含めた言語データの作成を終了させ,後半には検索システムとデータ出力装置の一応の完成を目指す。2013年度末に,完成したシステムの試作版を大英博物館学芸員のリチャード・パーキンソン博士ならびにマインツ大学のフェアフォーヘン博士に閲覧してもらい,助言を得る。その後,2014年度(最終年度)の前半はシステムの改良とチェックを繰り返し,後半には国際学会で研究成果を公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
①2012年度の繰越金が250,228円となっているが,このうち150,000は年度内に遂行していたのだが,筑波大学人文社会系の会計処理の都合により,次年度に送られてしまったものである。したがって,実質的な繰越額は87,229円となる。この繰越金は研究遂行上,予定していた短期雇用の任用が不要になったために生じたものである。 ②イギリスの大英博物館ならびにドイツのマインツ大学に訪問するための旅費として25万円を計上する。仮想サーバーが古くなってきたため,サーバー代として20万円,ならびにコンピュータ代として20万円が必要となる。その他,国内学会旅費10万円,英文校閲費20万円,コンピューターソフト購入費13万円,トナー等の消耗品費10万円が必要となる。
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