研究課題/領域番号 |
24520454
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
辛 昭静 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学付, 特任研究員 (40597192)
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キーワード | 医療コミュニケーション / 対人コミュニケーション / 多文化共生社会 |
研究概要 |
【研究I】医療面接における謝罪表現に対する患者と医師の認識 本研究では,患者と医師を対象に,診療場面における医師の謝罪表現に対する認識を調査するとともに,医師の謝罪によって関係が良くなった経験/悪くなった経験を記述してもらい,その記述を分析した.その結果,医師による謝罪行為が「時間」のように診療内容・結果と直接関係がない場合には,人間関係を調整する機能として働き,患者と医師の良い関係作りに貢献できるが,診療内容・結果と直接関係がある場合には,必ずしも良い結果につながるとは限らないことが示唆された。 【研究II】医師の丁寧表現不使用に対する患者と医師による認識の比較 本研究では,診療と直接関係のない発話と直接関係のある発話における医師(30代の医師と60代の医師)による丁寧表現の不使用に対する患者と医師の認識を調査した。その結果,①患者も医師も,診療場面における医師の丁寧表現の不使用に対しては,60代医師よりも30代医師に対して,より否定的な評価を下していた。②患者も医師も,診療と直接関係のある表現よりも,診療とは直接関係のない表現に対して,より否定的な評価を下していた。③患者に対する医師の丁寧表現の不使用に関しては,患者よりも医師の方が,より否定的な評価を下しており,より厳しく認識していることが示唆された。 【意義・今後の研究との関連性】 上記の【研究I】と【研究II】から得られた知見は,患者と医師がそれぞれの認識を具体的に理解し,より良い関係を築いていくための手掛かりとなるものである。これらの研究は,日本人患者と日本人医師を対象としたものである。今後は,韓国人患者を対象に同様の調査を行い,日本人患者との比較を行う。その結果に基づき,外国人患者と日本人医療者のコミュニケーション場面で起こり得るトラベルと避けるための手掛かりを提供する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,「多文化共生社会」における「外国人支援」の一環として,外国人患者と日本人医療者が信頼関係・協力関係を築き,安全で信頼できる患者参加型医療が実践できる環境作りのために,外国人患者が日本人医療者とのコミュニケーション場面でどういう困難に遭遇しているか,調査により問題の実態を明らかにすることを目的としている。そのため、まず日本人医療者と日本人患者を対象に、「診療場面における医師の謝罪」と「診療場面における医師の丁寧表現不使用」に対する調査を行った。今後は同様の場面における韓国人患者の意識を調査し,日本人患者の意識との比較を行い,両者の認識の違いを明らかにしていくつもりである。 以上のことから,本研究はおおむね順調に展開していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
①5月迄:日本在住の韓国人を対象にフォーカス・グループ・インタビュー(FGI)を実施し,「医師の謝罪」「医師の丁寧表現不使用」などについて意見を求める。 ②6月迄:上記の結果に基づき,質問紙を作成する。 ③7月迄:インターネット調査会社に調査を依頼する(日本人患者と韓国人患者対象)。 ④10月迄:調査結果を分析し,学会で発表する。 ⑤12月迄:その内容を論文としてまとめて,投稿する。 ⑥3月迄:成果報告書のとりまとめを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
・日本国内で韓国人患者を対象とした調査ができるインターネット調査会社がなかなか見つからず,調査計画通りに進まなかった。 ・海外(特に韓国)での学会発表を予定していたが、スケジュールが合わず、発表ができなかった。 1.予算の総額:本年度の繰り越し分(130万円)+次年度の予算(60万円)=190万円 2.予算執行の内訳 ①調査(インターネット調査):80万円 ②出張(国内外出張):30万円 ③機器(ビデオカメラ等):30万円 ④人件費(データ入力等):30万円 ⑤成果報告書印刷費:20万円
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