第1点「頻度分析の現状」。使用頻度分析の重要性に関する認識は、ドイツでも、確実に広がっており、Webデータを使用した「実証研究」も見られるようになったが、使用頻度分析をドイツ語研究の中でどう位置づけるべきか、位置づけ得るかなどの本質的問題に関しては、今なお手探りの状況であることを確認した。第2点「使用頻度の分析結果」。①語句結合という観点から(主語以外の)2項をとる動詞、結びつく前置詞句の名詞に2様の格を使い分ける動詞、②語句結合の拡大という観点からdass文とzu不定詞句を目的語としてとる動詞、③情報構造的観点から受動文形成で特殊性を見せる動詞に関する分析結果を、補充分析もしながら、整理した。第3点「データ分析の手順」。主文における定形の動詞を除き、動詞との結びつきの強いものほど文末に集中的に置かれるというドイツ語の特徴を考慮し、zu不定詞句(語句結合の基本的語句抽出)、dass文(情報構造上の影響を排除した形での基本構造の抽出)、主文(文頭語句も含めた、dass文の分析結果の検討および確認)というデータ整理手順が有効に機能することをさらに確認した。第4点「頻度分析を軸とする研究方法」。「意味と形式の関係」は、従来考えられて来た以上に多様であり、現時点で唯一可能な意義あるドイツ語研究は、「使用頻度分析を軸とするもの」、別の言葉で言うならば、「ふつうのドイツ語母語話者のふつうのドイツ語」の、実用的応用を想定した分析であるとの結論に達した。 以上が最終年度の研究成果である。研究期間全体の研究成果は、頻度的観点から「意味と形式の対応関係」に関して、分析方法のノウハウを蓄積するとともに、具体的なデータ分析に基づいた考察を行い、上述の第4点の結論に達し得たことである。また、これらの研究成果の意義は、実用性を志向するドイツ語研究の重要性を理論的かつ実証的に示した点である。
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