研究課題/領域番号 |
24520460
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
森賀 一惠 富山大学, 人文学部, 教授 (60243094)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 訓詁学 / 四声別義 / 經典釋文 / 羣經音辨 |
研究概要 |
従来の多音字研究では原資料である実際の音注よりも二次的な『羣經音辨』や『經史動静字音』などの記述を拠り所にしその解釈を踏襲するだけのものが多かった。『羣經音辨』は辨字同音異、辨字音聲濁、辨彼此異音、辨字音疑混、辨字訓得失の五門に分かれており,辨字同音異は卷一から卷五に,辨字訓得失は卷七に,その他の三門は卷六に収められている。分量的には七卷のうちの五卷を占める辨字同音異が最も多いが,後世に及ぼした影響では卷六の三門に及ばない。しかし、『羣經音辨』卷六の記述は時に宋代以降の品詞観によって『經典釋文』の音注について牽強付会な解釈をした部分もあるこの課題の最終的な目的は、多音字の音注解釈の際に参考にされる二次資料の中で代表的なもので、以後の多音字の解釈に多大な影響を与えたと思われる『羣經音辨』卷六の記述の妥当性について調査・考察し、訓詁学史上における『羣經音辨』の意味を明らかにすることである。 今年度は、本研究課題の基礎データとなる『羣經音辨』収録字の音注と釋義と引用される用例をすべて表計算ソフトに入力した。本課題の調査対象は巻六の収録時であるが、卷一~卷五に卷六と重複して収録される文字があるため,その記述の違いを見やすい形にするため、すべての収録字を入力した。データ入力後、卷一~卷五と卷六の記述を比較し、卷六が後の世に強い影響力を持ったのかについて考察した。その報告は『富山大学人文学部紀要』59に掲載予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、基礎データの入力を終了し、卷一~卷五と卷六の重出文字について、その記述態度の違いを明らかにしたため、予定通りに進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
基礎データの分析と調査対象の絞込み(前年度作成したデータを基に、『經典釋文』の注音状況を調査し、『經典釋文』では多音字と解釈されていない可能性のある文字を抽出する)。 関連の経注疏の読解および『經典釋文』の非多音字の解釈(前段階で抽出した文字が『羣經音辨』で多音字と解釈された原因を追究する)。 異本収集、テキスト校勘(反切などの音注では文字の誤りが致命的な判断ミスにつながりかねないため、テキスト異同の調査を綿密に行う)。 当該分野の研究者との研究打合せ(この分野の研究が比較的盛んな東京・京都などの研究機関において、研究者と情報交換を行い、情報の共有・蓄積を進め、最先端の知識を取り入れるとともに、当研究の普遍性と独自性について十分確認した上で、場合によっては方向を修正することも視野に入れつつ、研究を進める)。
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次年度の研究費の使用計画 |
「データ分析」には物品費が必要である。(約20000円) 「データ分析」「調査、資料収集」のためには、資料購入費が必要である。(約130000円) 「調査、資料収集」、「研究打合せ」には、国内旅費が必要である。(約100000円) 「調査、資料収集」には、文献複写費(約50000円)が必要である。
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