前年度は動詞形態論の調査を中心に行ったが、今年度は、補文構造の研究に重点を置き、研究の遅れを取り戻すよう努めた。研究協力者であるマイケル・パンギリーナンは、2014年度の前半は引き続き東京に滞在していた。主にメールと文書の交換によってデータの収集・検討を行い、補文構造の解明に努めた。 パンギリーナンは2014年秋よりドイツに移ったため、その前後の期間には十分な研究時間を取ることができなかった。そこでさらに、東京在住のもう一人のネイティブスピーカーにお願いし、収集データの補完をした。二人の協力者より得られたデータは、主節動詞が異なる約110種類の構文例、主名詞が異なる約35種類の構文例である。 予想されたことだが、補文は構造が複雑なため、書かれることが少ないカパンパンガン語では、ネイティブスピーカーでもうまく作れないケースがしばしば見られた。タガログ語が混じることもある。また、英文を元にカパンパンガン語の例を作ると、翻訳借用(calque)になってしまい、結果的に意味が通じにくい(カパンパンガン語では通常そのように言わない)表現になることもある。このような点を修正して、今後より信頼できる構文例の一覧を作成する。 結論として、補文節の構造(主節動詞の補部となる場合も、主名詞の補部となる場合も)は、接続の仕方によりいくつかのパターンに分かれる。さらに、主名詞を有する補文構造については、関係節構文との類似性が明確になった。Comrieの「アジアの一部の地域的特徴としてのattributive clauses」などの研究をしつつ、成果を報告する予定である。
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