研究課題
本課題は,近年日本において筆者が発見したマニ教絵画と,筆者が研究している中央アジアのトルファンで出土する中世イラン語で書かれたマニ教文献の内容とを比較対照して,両者の研究に資することを目的にしている.ちなみにこれらの絵画は,その絵画様式から,寧波を中心とする中国江南で14世紀頃に制作されたもので,日本には仏教絵画として輸入されていたものである.この研究計画の最終年度にあたる本年度は,研究成果の公表に努めた.その甲斐あって,年度の終わりも迫った平成27年3月27日に『中国江南マニ教絵画研究』京都,臨川書店(A4判,全320頁,カラー図版20頁)を刊行することができた.筆者は編者の一人として3部構成の本書の,図版の編集と最初の2部を担当した.また第3部に収録したアメリカ人の研究者の論文の翻訳と,他の3編の英語論文の翻訳の校閲も担当した.第1部では日本の読者のために,マニ教の解説と,当該のマニ教絵画を生み出した江南のマニ教徒の歴史についての史料を集めた上で,詳細な分析を施した.第2部は,これらのマニ教絵画に描かれているシーンを,中世イラン語で書かれたマニ教文献など,マニ教徒が書き残した文献の内容と比較した.20頁に及ぶカラー図版は,今後これらの絵画やシルクロードで出土するマニ教イラン語文献を研究する上で不可欠の材料になると確信している.マニ教絵画に関する研究以外に,近年中国福建省の霞浦で発現した清朝時代のマニ教文献の研究も行った.これらはつい100年ほど前まで生き残っていたマニ教徒が伝承してきた文献である.彼らは上述のマニ教絵画を生み出した信徒の遠い子孫たちに当たる.筆者はそれらの遅い時期の漢文マニ教文献の中に,感じで音写された中世イラン語の讃歌を発見し,唐代の漢字音を参考にしてもとの中世イラン語に復元することに成功しその成果を論文として発表した.
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Mani in Dublin. Selected papers from the seventh international conference of the International Association of Manichaean Studies in the Chester Beatty Library
巻: 1 ページ: 389-446
国際漢学研究通訊
巻: 9 ページ: 103-121
杏雨
巻: 17 ページ: 1-8