研究課題/領域番号 |
24520466
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
福田 哲之 島根大学, 教育学部, 教授 (10208960)
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キーワード | 戦国楚簡 / 秦簡 / 漢簡 / 郭店楚簡 / 上海博物館蔵戦国楚竹書 / 馬王堆漢墓帛書 / 北京大学蔵西漢竹書 |
研究概要 |
本年度は、新たに公表された資料の分類・整理と短横添加字に関する用例分析とを継続するとともに、個別の資料について以下のような検討を行なった。 (1)浙江大学蔵戦国楚簡『左伝』の年代判定の基準となる言語事象として、①用字、②時代差と地域差、③系列字の体系という3つの観点から検討を加え、戦国期の文字資料との間に顕著な時代的齟齬が見いだされることを明らかにし、当該資料が偽簡であることを古文字学の面から論証した。 (2)『老子』について、郭店楚墓竹簡・馬王堆漢墓帛書・北京大学蔵西漢竹書・現行諸本の比較分析を試み、テキスト相互の系譜関係について考察を加えた。このような系譜建設は、テキスト変遷の過程を究明し、戦国から漢代にかけての簡牘文字の変遷を考察するための基礎作業として位置付けられる。 (3)上海博物館蔵戦国楚竹書『史蒥問於夫子』について、当該資料に登場する「史蒥」と『漢書』古今人表の「史留」とが同一人物であることを①「蒥」字と「留」字との通用関係、②『史蒥問於夫子』の残簡復原と内容の検討、③『漢書』古今人表の排列から見た「史留」の人物と活躍時期の3点から明らかにし、本篇が長らく未詳とされてきた『漢書』古今人表の「史留」の事跡を伝える貴重な資料であることを指摘した。 これらの研究成果は、海外や国内の学会・研究会で報告するとともに、論文にまとめて学術誌や論文集などに発表した。また2013年10月25日・26日に国際学会で北京大学を訪問した際には、北京大学蔵西漢竹書の一部について、実見・調査の機会を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画で予定していた楚系簡牘資料を中心とする短横添加字についての調査・分析とともに、新たに浙江大学蔵戦国楚簡『左伝』の古文字学的検討、郭店楚墓竹簡『老子』・馬王堆漢墓帛書『老子』・北京大学蔵西漢竹書『老子』の比較分析、上海博物館蔵戦国楚竹書『史蒥問於夫子』の復原研究など、個別の資料についても研究を進展させることができた。 これらの研究成果は「第24屆中国文字学国際学術研討会」(台湾国立中正大学)、「簡帛《老子》与道家思想国際学術研討会」(北京大学)などの国際学会や国内の研究会などで報告するとともに論文として発表し、一定の学術的成果を収めることができた。 また昨年度までに発表した戦国秦漢簡牘を中心とする論文をまとめた中国語の論文集を台湾の出版社から刊行し、研究成果を広く発信することができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画にもとづき、新たに公表された新資料を取り入れながら、戦国簡牘文字を中心に短横添加字についての調査・分析を継続して行なう。 全体的な分析と並行して、戦国簡牘文字の多様性や秦の文字統一前後における形体変化を究明する上で重要と見なされる資料を個別的に取り上げ、筆記文字の実態について詳細な検討を加える。 これらの検討を通して得られた成果は、学会や研究会などで報告するとともに、論文として発表する。また海外の研究者との学術交流も積極的に推進していく。
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