本研究は、戦国から秦漢にかけての漢字の実態と変遷の過程を、当時の竹簡や木簡に書写された筆記文字の分析を通して明らかにしたものである。 戦国期の楚墓から出土した竹簡の書物のうち、楚系文字とは異質の要素をもつ3種の資料を取り上げ、それらの文字の性質について検討を加えた。その結果、時代・地域・用途の3つの要因が、各資料の特異性に深く関与していることが明らかとなった。本研究によって、戦国期における筆記文字の実態に対する理解が深まり、秦の文字統一を経て漢代に展開していく漢字の変遷過程をより明瞭に把握することが可能となった。
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