本研究は、ドイツ語指示詞der、英語this/that、定冠詞der、日本語指示詞コソアに着目し、先行研究の検討とWeb上のデータの比較を通じて、それらの意味の共通性と相違を考察し、次の点を明らかにした。(1)発話場面の直示と文脈照応の機能は指示表現という点で統一的に把握できる。(2)近接・遠距離の対立はドイツ語では明示的ではなく、近接と非近接のdieser, derの対比がある。(3)日本語のソ系とドイツ語derは、距離と無関係に話者の視点に応じて指示対象が変動する。それは、話者が直接に操作できない間接的参照視点が介在する変項解釈や、人称代名詞との対比で話題転換を導入する役割を果たす。
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