本研究課題は ①中原官話汾河方言群に属する陝西省韓城方言と山西省霍州方言のデータを収集する;②韓城、合陽、霍州、洪洞、臨汾5方言のデータから中原官話汾河方言群祖語を再構し、祖語から現代汾河方言群への音韻変化を跡づける;③汾河方言群祖語の官話音韻史上の位置づけを考察する;④汾河方言群音韻史を例に中国語方言音韻史の方法論に関する諸問題を検討する、以上四点を目的とし、『韓城方言調査研究』(著書)および『中原官話汾河片音韻史研究』(著書)によりその成果を公表することを予想される研究成果とした。 従来、中古音との比較に終始した中国語方言音韻史研究に疑義を呈し、オーソドックスなcomarative methodが中国語諸方言に対しても適用可能であり、またより妥当な音韻史を描き出すことができることを示すことにより、今後の中国語方言音韻史研究に新局面を開くことを、中原官話汾河片を例に目指したのである。 最終年度平成27年度は、主として『韓城方言調査研究』および『中原官話汾河片音韻史研究』の執筆を進めた。『韓城方言調査研究』については文法関連の執筆を徐鵬彪氏(陝西師範大学)に依頼し、初稿を完成させ、出版先の中華書局(北京)に提出した。平成28年1月に初校の校正を終わらせ、出版に向けた最終プロセスが進行中であり、平成28年(2016年)中には正式に出版される見込みである。『中原官話汾河片音韻史研究』については取り上げる地点に翼城、新絳、万栄方言のデータを加え、洪洞方言のデータを省くことにした。また晋語呂梁片方言のデータと比較する必要が研究の過程で明らかとなったため、柳林方言の調査を行った。初稿は完成し、方言データの最終的なチェックを行っている段階にある。上記③、④についてもこの初稿に含まれている。現在の予定では、北京大学関係の出版社から出版することになっている。
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