研究実績の概要 |
過去二年間に収集した日本文学のフランス語翻訳文献,及び電子コーパスから得られたデータを基に,テクスト内での話法の機能分析を行った。本年度は特に,平成24年度に考察した直接話法と関係の深い,否定疑問文とその返答に使われる応答辞oui, si, nonの使い分けを取りあげた。そして今まであまり考察されてこなかった,書き言葉の中に現れる事例に絞って,そのテクスト内での生起条件を記述した。この分析によって,テクストの中の文と文の繋がり方の可能なあり方の1つを明らかにした。この研究成果は,7月にドイツのベルリン自由大学で行われた第4回フランス語学世界大会で発表した。ここでの考察をまとめた論文は当該学会の学会誌に掲載された。 否定疑問文とその返答に関する研究はあくまで1つの事例にすぎないが,対照言語研究の観点から見た,日仏対照のテクストの一般的理論構築の基礎作りとなる。今後このような個別の事例の分析研究を積み重ねることで,いくつもの支配的原則を同定できると予測され,その積み重ねの果てに,最終的に総合的なテクストの理論ができあがると期待される。 なお,研究計画当初に平成26年度に予定していた応用研究の教材開発は,前倒しをして昨年度に行いすでに成果を公開したため,今年度は特に行わなかった。その代わりに,教材開発という応用研究のさらなる発展として,フランス語のアカデミック・ライティングと日本におけるその教育の意義に関する考察を行い,フランス的なテクスト構成の学習が日本人大学生にとって異文化理解の観点から有用である点を明らかにした。この成果として,2月に名古屋で開催された国際研究集会で講演を行った。
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