研究実績の概要 |
本研究は広がりと深化を見せている日本語デジタルコミュニケーションと世界的にもその重要性が認識され、特に日本で顕著な高齢化が相互に組み合わさり、社会にどのようなインパクトを及ぼすかを、国際比較を強く意識し社会言語学的に解明することを目的とし、主に高齢者によるブログを分析した。若者に関するデジタルコミュニケーション研究は多く行われているが、高齢者に関する研究は極めて少なく、この意味で本研究は貴重である。 最終年度においては、学会発表4件、刊行予定著書の執筆が主な活動となった。 6月のSociolinguistic Symposium 20ではブログに見られる役割語使用から、ブログ著者のアイデンティテイ構築を分析し、6月末のIntervarietal Applied Corpus Linguistics Conferenceでは、ブログに特徴的な絵文字に対しては異なる分析方法を用いる必要性を指摘。また7月の国際ユーモア学会では高齢者を巡るユーモアに関して、ブログデータと2チャンネルデータを比較すると、高齢者のユーモアに関して複数の視点の重要性を指摘した。10月のNew Ways of Analyzing Variation Conferenceでは、高齢世代と若者世代の間で絵文字、顔文字使用に於ける差異を指摘した。性差と関連の深い「かわいい」に関するイデオロギーも介在することも指摘した。2015年夏に刊行予定のHandbook of Language and Digital Communication では“Style, creativity and play”の章を執筆し、英語圏読者を対象にこの分野の概説を行った。日本人高齢者のデジタルコミュニケーションについて、日本語文化圏にはなじみの少ない欧米の研究者に向け、研究の最先端を発信という点でも意義のある研究であると言える。
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