研究課題/領域番号 |
24520483
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
山口 真佐夫 摂南大学, 外国語学部, 教授 (00191239)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | インドネシア / スラウェシ島中・南部 / 言語学 / 危機言語 / 比較言語学 |
研究概要 |
平成24年度は、4月から8月に掛けて現地協力機関、現地協力者とメールを用いて夏期訪問の打合せを行った。打合せの相手機関・研究者はインドネシア共和国、ジャカルタ市にある国家教育省、言語建設・発展庁の事務局長Yeyen Maryani女史、南スラウェシ州マカッサル市にある南スラウェシ・西スラウェシ州言語研究所所長Adri氏、東南スラウェシ州言語部所長Hanna氏、ハサヌッディン大学文化学部教官Nurhayati女史、ゴロンタロ州言語局研究員Sukardi Gau氏、マレーシアサバ大学学問・言語促進センター準教授Saidatul Nornis Hj. Mahali女史である。 8月15日に出国し、南スラウェシ州マカッサル市では、南スラウェシ・西スラウェシ州言語研究所の未刊行研究報告書、ハサヌッディン大学の廃刊学術雑誌および現行学術雑誌、ハサヌッディン大学の修士論文、博士論文の調査を行う。また地域語関係の民間出版物を収集した。東南スラウェシ州クンダリ市では、東南スラウェシ州言語部の出版物の調査を行う。また、国立ハルオレオ大学教育学部の出版物、同大学の修士論文を調査する。さらに、同大学の研究者と意見交換を行う。ジャカルタでは、国家教育省、言語建設・発展庁を訪れ文献調査およびインドネシアでの成果を事務局長に報告する。クアラルンプール市で出版物の収集を行った。また、コタキナバル市では、マレーシアサバ大学図書館出版部、および民間の出版物の調査・収集を行う。9月10日に帰国する。 上記の現地研究機関、研究者訪問を通して収集した資料・情報は、国内外での学会および研究会、学術雑誌を通して発表した。さらに現在論文1本を執筆中の他、現地研究の論文を集めた論集を2冊編集中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、本研究の対象地域であるスラウェシ島中・南部の南スラウェシ州、西スラウェシ州、中スラウェシ州、東南スラウェシ州の4州中、本研究の中心になる南スラウェシ州および東南スラウェシ州における現地研究機関の研究状況、出版物の調査・収集を目的に現地を訪れた。南スラウェシ州の研究機関は、南スラウェシ州のみならず他の3州に言語研究機関ができる以前からの研究活動があり、今回はそのすべてを調査することはできなかった。ただし、現地研究を通してさらに古い文献を所有している研究者に会うことができ、今後さらに成果が期待できる。東南スラウェシ州は、州都クンダリの研究所、大学を訪れ文献を収集した。新たな文献の存在を確認することができたが、実際に収集しきれなかったものも多い。今後引き続き調査を行う必要がある。マレーシアにおいては、サバ州で南スラウェシからの移住者に関する文献等を収集することができた。また、サバ州に移住した南スラウェシから移住者の子孫から言語状況の情報を得ることもできた。 平成24年度の成果発表は、10月1日~4日にマカッサル市で行われた「第2回南スラウェシ州地域語国際学会」の発表、11月20日発行の『言語文化学会論集第39号』に掲載された論文、12月8日に行われた言語文化学会第26回大会での発表、3月5日に「インドネシア諸語の記述的研究:その多様性と類似点」2012年度第4回研究会研究会での発表を通して行った。 現時点では、論文を1本執筆中の他、現地研究者の論文を集めたMorfofonemik dalam Afiksasi Bahasa Daerah di Pulau Sulawesi Bagian SelatanおよびFonologi Bahasa Daerah di Pulau Sulawesi Bagian Selatanを編纂中である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度の成果から見て、平成25年度は本研究の拠点となるインドネシア共和国の南スラウェシ州マカッサル市、カイリ・パモナ語群の言語が分布している中スラウェシ州パル市、およびジャカルタ市を訪れる予定である。南スラウェシ州マカッサル市では、言語研究機関、大学等を訪れ文献調査を行う。特に平成24年度に訪問できなかった国立マカッサル大学、私立大学を訪問し、学位論文の調査を行う。さらに、個人で学術雑誌を所有している研究者と会い、文献調査する。中スラウェシでは、中スラウェシ州言語研究所および国立タドゥラコ大学を訪問し、研究状況および出版物の調査を行う。タドゥラコ大学に関しては、平成24年度参加・発表した「第2回南スラウェシ州地域語国際学会」の際に知り合った、同大学教官から助力の約束をとってある。ジャカルタ市では、国家教育省、言語建設・発展庁の事務局を訪れ、事務局長に報告と今後の助力を要請する。 マレーシアでは、マレーシア人のブギス語研究者を訪問し、研究状況についての情報を集める。なお、平成25年度は、大学での夏期休業期間中に行われる諸行事業務と関連して、インドネシアを夏期に、マレーシアを春期に分けて渡航する可能性がある。 平成26年度以降の研究については、引き続き南スラウェシ州での研究を行い、東南スラウェシ州、中スラウェシ州、マレーシアでの追加研究を行う予定である。特に東南スラウェシ州に関しては、スラウェシ島の本島部にあるクンダリの研究所再訪、南部のブトン島、ムナ島を中心とする東南スラウェシ州島嶼部に分けての計画が必要と思われる。上記の方策によって得られる研究資料に基づき、随時論文執筆、著書・編著の刊行、研究発表を行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費は、夏期に行うインドネシア共和国の南スラウェシ州マカッサル市、中スラウェシ州パル市、およびジャカルタ市で行う現地研究機関での文献調査、情報収集、研究成果報告および現地研究者との意見交換および情報収集のための研究代表者と研究協力者の旅費に使われる。また、春期に予定しているマレーシアでの、マレーシア人ブギス語研究者を訪問し研究・出版状況についての情報収集を行うための研究代表者と研究協力者の旅費に使われる。さらに、研究成果の出版にも使用される。 「次年度に使用する予定の研究費」は、現在編集中の2冊の論文集の出版費用、および依頼する現地調査費のための人件費の一部に充てる予定である。現地調査依頼の候補言語としては、南スラウェシ州スラヤル島に分布しているウォトゥ・ウォリオ語群のライヨロ語(話者数は10人を切っているとの情報あり)、東南スラウェシ州ブトン島に分布しているムナ・ブトン語群のリアブク語(話者数は75人)を考えている。
|