研究課題/領域番号 |
24520484
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
中野 陽子 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (20380298)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 先行文脈 / 文処理 / 日本語 / 英語 / 関係節 / 国際情報交換 / トルコ |
研究概要 |
本研究は先行文脈の情報が文処理をする際に文内の曖昧性の解消に与える影響について調査を行っている。(1)本年度はまず関係節付加曖昧構文が生起する先行文脈の談話構造についての調査を行った。日本語の大規模コーパスから関係節付加曖昧構文を含むテキストを抽出して結束性の分析を行った。その結果、先行研究で考えられている以外の談話構造があることがわかった。(2) 関係節付加曖昧構文内の語句の意味や関係節の音韻的長さを文脈情報と考えた場合に、先行詞の選択に影響するかについて質問紙による課題と被験者ペースの読み課題を行って調べた。その結果、関係節と先行詞の音韻的長さの間にバランスを取れるような先行詞が選択される傾向が見られ、先行研究と一致する結果となった。(3) 上記(2)について日本語学習者についても調査を行った。その結果、学習者群も母語話者と類似した傾向を示し、同様の処理を行っている可能性が示唆された。(4) 急速眼球運動装置の設置、試用を行った。先行研究の検証を行うため英語について調査を行っている。(5)日本語は語順が比較的自由である(例文(a)「お客に秘書がお茶を出した。」(b)「お茶を秘書がお客に出した。」)。文頭の「お客に」や「お茶を」のみを読んだ時点では、後続する語句によって「お客に」や「お茶を」の文構造内での位置が変わるため、両者は構造的に曖昧である。本年度は例文(a)のように間接目的語が文頭にある場合に、その構造上の位置に関する曖昧性が文頭で解消されるかについても事象関連電位を指標として調査した。文頭の「~に」のみを読んだ時点ではその構造上の位置が認識されている証拠は見つからなかった。 上記の調査は先行研究の検証を行うに留まらず先行文脈の談話構造の解明や異なる談話構造が文処理に及ぼす影響に関する調査に発展させることができるという点で重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は先行文脈の情報が文内の曖昧性の解消に与える影響について調べている。本年度はまず関係節付加曖昧構文が生起する先行文脈の談話構造について調査を行った。先行研究を吟味したところ先行文脈についての実態調査が必要であることがわかったためコーパスの分析から始めることにした。調査の結果、先行研究で想定されていた以外の談話構造もあることが分かった。日本語の眼球運動測定実験を行う予定であったが、このような調査を飛ばして眼球運動測定実験を実施しても、その結果の意義が薄れてしまうため、敢えてコーパス分析を行った。今後行う眼球運動測定実験でどのようなテキストを刺激として作成したらよいのか検討する上で意義のある結果が得られた。また日本語について行動実験を行って文脈情報が文処理に与える影響を調べることができた。更に先行研究がある英語について眼球運動測定実験を実施して文脈情報が文処理に与える影響を調査した。次年度はこれらの研究から得られた結果を基に次の実験の刺激を作成できるため、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は日本語において文脈情報が文処理に影響するかどうかについて行動実験や眼球運動測定の実験を通して調べる予定である。 行動実験については、平成24年度の研究では、関係節付加曖昧構文の処理において先行詞を選択するときに、音韻的長さの影響が確認された。平成25年度は音韻的長さのみならず統語的選好も結果に反映されているのかどうか確認するための実験を予定している。 眼球運動測定の実験については、平成24年度の研究結果に基づいて刺激を作成し、行動実験と眼球運動測定実験を行う予定である。 時間が許せば第一言語としての日本語についてのみならず、第二言語としての日本語や英語についても研究を進める予定である。またこれまでの研究結果をまとめて国内外の研究会や学会等で発表し、コメントを得たいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は平成24度の成果を学会等で発表するための旅費と平成25年度の実験に参加する被験者や実験補助者への謝金、資料等をコピーするための費用に当てる予定である。
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