研究課題/領域番号 |
24520484
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
中野 陽子 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (20380298)
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キーワード | 文脈の影響 / 統語的あいまい性 / 関係節 / 文処理 / 心理言語学 |
研究概要 |
本年度は,統語的に曖昧な構造を含む文の処理に,その文に先行する文脈が与える影響を第一言語と第二言語の英語と日本語について調査した。どちらも質問紙によるオフライン課題と視線計測による読み課題を行った。統語的に曖昧な構造を含む文は,関係節の先行詞となる候補の名詞句(NP1,NP2)が2つある文であった(英語: NP1 of NP2 関係節,日本語:関係節 NP1のNP2)。 英語についての結果を分析したところ,オフライン課題では母語話者も学習者も先行文脈がNP1またはNP2のどちらか一方を支持する内容であるとき,支持された方の名詞句を先行詞として選択する傾向が見られた。視線計測の実験結果はオンラインの処理を表していると考えられている。母語話者も学習者もNP1またはNP2のどちらかと一致するような先行文脈がある方が先行文脈が全くないときよりも停留時間が短い結果となり,先行文脈が文処理を易しくしていることが示唆された。母語話者についてはもう少し被験者数を増やすことが望ましい。日本語については昨年度のコーパスを基にした研究や先行研究に基づいて実験材料を作成し,オフライン課題を実施した。その結果,母語話者も学習者も先行文脈が後続の文の構造的曖昧性の解消に影響を与えることが示唆された。日本語についても被験者数を増やすことが望ましい。日本語の視線計測の実験は未完了である。 上記の結果の一部を2014年度の日本第二言語習得学会や国際学会で発表する予定である。また平成25年度は平成24年度に実験の実施を行った研究(音韻的情報が上記の統語的曖昧性の解消に影響を与えるか)の結果をまとめ,電子情報学会の思考と言語の夏季の研究発表大会や第二言語習得研究会の年次大会で報告した。また関西心理言語学研究会を月1回開催し,内外の研究者を招いて研究発表をしたり意見交換をして,今後の研究の参考とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では日本語のみを対象とする予定であったが,1つの言語のみについて調査を行っても一般化するのは難しい。また英語については先行研究が多く,参考資料が多いため実験材料の作成や実験の実施が日本語よりも容易である。そこで英語について実験を先に行い,更に日本語について調査を行っている。本年度は英語のデータ分析も一通り終了し,分析結果を平成26年度,学会で報告する予定となっているため順調に研究が進んでいると考えている。更に日本語についてもオフラインの実験を実施し,分析結果も出ている。現在は視線計測の実験の準備を行っている。ヨーロッパ言語は語と語の間にスペースがあるが日本語は語と語の間にスペースがない。そのため視線計測実験結果を分析する際,分析対象となる領域をどのように区切るのかということを難しくしている。日本には日本語について視線計測を行っている先行研究が非常に少なく,分析方法についての調査に時間がかかっているが,おおむね順調に進展しているのではないかと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まず平成25年度から行っている日本語の視線計測の実験を完了させ,実験結果を検討する。また関係節付加曖昧構文の処理だけではなく,曖昧な構造を含む他の構文を実験材料にした場合に先行文脈の影響が見られるかどうかを調査し,平成24年度,平成25年度に行った研究の結果がより一般化できるかどうか検討する。 引き続き実験を行うだけではなく,平成24年度,平成25年度の研究結果をまとめて学会で発表したり,論文にまとめ学術雑誌等に投稿する予定である。また現在行っている実験や平成26年度行う予定の実験の成果についても国内外の学会等で発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に実施していた実験のうち,対象となる被験者が外国人であるため人数を集めるのに時間がかかった。また,日本語の視線計測のデータを分析する方法の調査に時間がかかり,実験の被験者がまだ十分に集まっていない。このような理由で被験者への謝金や実験材料の印刷代などの執行を行っていないため次年度使用額が生じた。 平成25年度に開始した実験を続け,被験者に謝金を支払ったり実験材料を印刷したりするために使う予定である。
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