研究課題/領域番号 |
24520488
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
大西 正幸 総合地球環境学研究所, 研究部, 外来研究員 (10299711)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 危機・少数言語 / ブーゲンヴィル |
研究概要 |
本年度は、7月後半から8月後半にかけて、大西およびアデレード在住の研究協力者 Therese Kemelfield が、パプアニューギニアのポート・モレスビー、ブカ島、およびブーゲンヴィル島南部(バイツィ語、モトゥナ語、ナーシオイ語地域)にて、約 3 週間の現地調査を行なった。また、研究協力者の稲垣和也は、8月末から9月初頭にかけて、バイツィ語地域の隣接地域であるナゴヴィシ語地域を中心に約 2 週間の現地調査を行なった。 大西と Kemelfield は、8月末まで続いた洪水のため、調査期間中、バイツィ語地域での滞在が困難となり、近隣のモトゥナ語地域を拠点にして、バイツィ語と密接な関係のあるモトゥナ語の調査を行なうとともに、バイツィ語地域ではおもに次年度以降の調査のための住民たちとのアレンジに時間を割いた。バイツィ語の言語データはブカ島に居住する話者から収集した。また、ポート・モレスビーにて、研究協力者 Rebecca Manioka (バイツィ語話者)とともに既存音声データの分析を行った。今回ブカ島で収集した音声データについては、現在、Manioka と Kemelfield の協力を得て分析を進めている。 この他、今年度の研究実績としては、稲垣和也は、2012年7月に国立民族学博物館で開かれた国際学会で、また大西は、2012年12月に琉球大学国際沖縄研究所で開かれた「新しい島嶼学の創造」プロジェクトのシンポジウムで、バイツィ語地域を含む南ブーゲンヴィルの言語に関する研究発表を行った。また、大西は、ニコラス・エヴァンズの「危機言語」の翻訳書(共訳)の訳者解題(427-440ページ)において、南ブーゲンヴィルの言語を含む危機言語の問題について論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績」で述べたように、長期の洪水のため実地調査に障害が生じ、本年度、バイツィ語地域で行なう予定だった、言語データの収集と社会言語学的な調査が遅れている。(言語データの収集に関しては、ブカ島在住の話者との調査によって、ある程度補うことができた。)ただし、現地住民とのアレンジができたため、平成25年度以降の現地調査はスムーズに進むことが期待できる。 なお、今回の現地調査を通して、南ブーゲンヴィル、特にバイツィ語地域における住民移動の実態が明らかになった。伝統的な居住形態が大きく変わり、もともとの集落を捨てて幹線道路沿いに新しい住居を建てたり、他の場所に移住したりする家族が多くなっている。そのため、社会言語学的な調査や言語地図の作成が、当初の予定よりもはるかに多くの時間と労力を要することが予想されることとなった。これに対する対応策については、「今後の研究の推進方策」の項で述べる。
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの達成度」の項で述べた通り、社会言語学的な調査や言語地図の作成にかなりの困難が予想される。平成25年度の実地調査で、これらの作業がどの程度可能かを判断するが、研究期間があと2年しか残されていないことを考えると、そのような調査に多くの時間と労力を割くことはできない。単語・テキスト等の言語の一次資料の収集はまだ不十分であり、次年度はその収集と分析に重点を置き、バイツィ語の文法記述に向けての作業を優先的に進めるのが賢明であろうと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も、消耗品や基本文献資料の購入費の他は、研究費の大部分を、大西、Kemelfield 、稲垣のブーゲンヴィルにおける実地調査と、ポート・モレスビーにおける Manioka との共同分析作業のための旅費に用いる。実地調査は、今年度と同じく 8-9 月に集中的に行う予定である。 また、キャンベラのオーストラリア国立大学で、ブーゲンヴィルをめぐる重要な国際セミナーが開かれることになっている。(このセミナーは、当初平成25年5月に予定され、その後7月に延期された。)大西と Kemelfield が参加予定であり、その旅費も計上することになる。
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