研究課題/領域番号 |
24520488
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
大西 正幸 総合地球環境学研究所, 研究部, 客員教授 (10299711)
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キーワード | 危機言語 / ブーゲンヴィル |
研究概要 |
本年度は、9月の約4週間、大西と、研究協力者の稲垣和也、アデレード在住の研究協力者Therese Kemelfield、ポート・モレスビー在住の研究協力者Rebecca Maniakoの4名で、パプアニューギニアのポートモレスビー、ブカ島、およびブーゲンヴィル南部のバイツィ語地域とそれに隣接するナゴヴィシ語地域で、フィールド調査を実施した。 バイツィ語地域は、昨年度、洪水の影響でフィールド調査ができなかったため、大西にとって、今年度が事実上はじめての調査であったが、Rebecca Maniakoの実家に滞在し、語彙、文法の一次データと、2名の話者による民話・インタビュー等のテキストデータを収集することができた。また、現地およびポートモレスビーにおいて、Rebecca ManiakoとTherese Kemelfieldの協力で、収集したデータの分析をある程度進めることができた。いっぽう、稲垣和也も、フィールド調査を通して、ナゴヴィシ語2方言の語彙データを収集したため、バイツィ語との比較音韻分析が可能になった。 この他、今年度の研究成果としては、大西は、パプアニューギニア大学において、ブーゲンヴィルの生物文化多様性に関する招待講演を行ない、また総合地球環境学研究所において大西が主宰した国際シンポジウムにおいて、南ブーゲンヴィルの言語多様性に関する発表を行なった。このいずれの発表でも、バイツィ語とナゴヴィシ語に関する情報が重要な位置を占めている。また、出版物としては、琉球大学国際沖縄研究所「新しい島嶼学の創造」プロジェクトによる出版物『島嶼地域の新たな展望―自然・社会・文化の融合体としての島々』に論文を寄稿、バイツィ語・ナゴヴィシ語を含む南ブーゲンヴィルの言語状況や言語教育の現状を論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、現地で、一定程度、言語データの収集・分布を行なうことができたが、限られた調査時間の中で、バイツィ語話者の社会動態に関する調査に、十分、時間を割くことができなかった。いっぽう、バイツィ語の語彙やテキストを中心とする一次データの収集は集中的に行ない、かなり進めることができたが、昨年度の遅れを完全に取り戻すまでには至っていない。特に動詞のパラダイムの確認作業やテキスト分析がまだ終わっておらず、包括的な文法記述には不十分なので、最終年度も、現地での集中的なフィールド調査と、話者の協力による分析作業を継続する必要がある。 なお、研究協力者の稲垣が行なっているナゴヴィシ語の語彙データ収集と分析は、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
26年度も、大西は、Rebecca Maniakoの協力のもと、バイツィ語地域でのフィールド調査を通してバイツィ語の言語データの収集を継続し、その分析を進める。また、稲垣は、ナゴヴィシ語の音韻データのチェックと文法の一次データの収集を行なう。フィールド調査とその分析作業を通して、26年度中に、バイツィ語文法記述と比較音韻分析に必要なデータを揃えることに、全力を注ぎたい。そのデータをもとに、26年度後半から27年度にかけて、大西はバイツィ語の簡易文法とバイツィ語/ナゴヴィシ語/モトゥナ語の比較音韻分析、また、研究協力者の稲垣はナゴヴィシ語の音韻分析に関する学術論文の出版を準備する。 なお、バイツィ語話者の社会動態の調査は今後の継続課題とし、今回は行なわない。
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