シダーマ語のフィールドワークを、平成26年7月15日~8月19日および平成27年2月17日~3月2日にエチオピアのシダーマ・ゾーンで行ない、論文執筆と学会発表のためのデータを集めた。 平成27年2月の国立国語研究所の移動表現に関する国際シンポジウムで、(i) シダーマ語とクプサビニィ語の移動のイベントを表す構文のパターンと意味要素についての単独口頭発表、(ii) 移動の様態についての類型的研究に関する共同口頭発表、(iii) アフリカの言語の移動表現のパターンについての共同ポスター発表、(iv) シダーマ語の視覚的移動の表現についての単独ポスター発表を行なった。それぞれの内容は以下の通りである。(i) 移動の様態のタイプの自然さによって必ずしもより統合された構文が使われるわけではないことを量的データで示した、(ii) 移動の様態がいかに目立っているかということと構文のタイプの関係を様々な言語のデータを使って統計的に分析した、(iii) 8つのアフリカの言語がどのような類型的な特徴を示すかを記述した、(iv) シダーマ語のturnを表す動詞を使った視覚的移動を表現する構文がcarryというよりkickを表す構文と類似していることを指摘した。 他にも、アフリカの言語の情報構造の国際シンポジウムでクプサビニィ語のコピュラ構文と情報構造についての口頭発表を行ない、論文を出版し、さらに、クプサビニィ語のいいさし条件構文についての論文を出版した。 以上の研究の成果は、これまでに深く研究されていない言語の現象を理論的に中立な立場から記述し、言語類型的な問題に取り組んでいるという点で価値がある。さらに、個別言語を越えて、他のアフリカの言語や他の地域の言語との比較をした研究に発展させることができた。
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