本研究の目的は以下の2点である。(1)方言調査におけるさまざまな調査法を用いた場合,それぞれの調査データがどの程度安定するのかという点を定量的に明らかにし,各調査法の信頼性を表す指標(信頼性係数)を求める。(2)各調査法によってこれまでに収集した方言調査データ(言語変化の解明を目的とする社会言語学的多人数調査データ)の再分析を行なう。 標記目的を達成するため,研究期間内に以下の研究活動を行なった。 [1]面接質問法による調査:面接調査法の信頼性係数を求めるために,同一のインフォーマントに対して,同一の方法による実験的調査を複数回実施し,その結果の安定性を把握する。24年度,25年度には宮城県伊具地方において同一インフォーマントを対象とした調査を行い,言語地理学的調査データの信頼性について検討した。さらに25年度,26年度には福島県田村郡小野町において同様に2回の調査を繰り返し,社会言語学的多人数調査に関する信頼性検討のためのデータセットを得た。なお小野町の調査では若い世代において,新しい方言変化の様相が捉えられたため,1年間研究期間を延長し,27年度に中高生を対象とした補充調査を実施した。いずれの調査についても報告書を刊行するとともに,分析結果を学術論文として発表した。 [2]自記式調査法による調査:自記式調査法についても,[1]と同様,同一インフォーマントに対して同一の調査票を用いた2回の実験的調査を実施し,データセットを得ている。本調査データについては引き続き分析を進めている。 [3]インタビュー法による調査:インタビュー法調査についても福島県内各地で自由談話収集を行ない,同様にデータを収集した。
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