研究課題/領域番号 |
24520493
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
金田 章宏 千葉大学, 国際教育センター, 教授 (70214476)
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研究分担者 |
小嶋 賀代子 (下地 賀代子) 沖縄国際大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (40586517)
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キーワード | 日本語学 / 記述文法 / 宮古方言 / 八重山方言 / ベシ / 意志推量 |
研究概要 |
「研究実施計画」にしたがって、当該地域の聞き取り調査を実施した。当該年度において研究代表者の金田は、八重山地域では西表島の祖納と干立の追加調査のほか、新規に黒島の仲筋を、また宮古地域では宮古島の久貝、池間島、大神島、来間島において、新規または追加の聞き取り調査を実施した。また研究分担者の下地は、宮古地域の宮古島高野、同・新里、同・野原、それに来間島で聞き取り調査を実施した。 当該年度における調査結果であるが、黒島の仲筋をのぞき、ベシ由来形の存在が確認され、宮古地域におけるベシ由来形使用のおおよその全体像が明らかになった。宮古地域ではこれまですべての調査地点でベシ由来形の使用が確認されているが、そのなかで、音声的な違いや使用できる意味の範囲の違いが明らかになっている。 具体的には、宮古地域では意志勧誘表現においても推量表現においても、疑問詞を含む文にベシ由来形があらわれることはない。この点、八重山の西表祖納の用法にその制限がないのと大きく異なる。また、勧誘表現における使用では、宮古地域のなかでも差異が見られ、北部の池間島や大神島でそれが使用できるのに対して、南部の久貝や来間島などでは使用できないようである。この点については最終年度にさらに注意深く補足調査する必要があるだろう。 このような結果は、本研究で「ベシ由来形」と称している語形が、まさに古代語のベシに由来する語形であるという可能性がきわめて高いことを裏付けるものであり、琉球諸方言における意志勧誘推量表現の歴史的変遷を考察する際に重要な一部分となることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
結果的に前年度の遅れをそのまま引き継いだようなかたちになったが、調査地点についても予定よりは若干少なめとはいえほぼ順調にこなすことができているので、全体としては問題の生じるような状況ではない。調査票についても、調査項目の微修正を行いながら調査を実施しており、最終年度には期待した成果がえられると考える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、これまでの調査地点の補足追加調査に加えて、以下の地点を新規に調査する予定である。宮古地域の伊良部島ほか、八重山地域の石垣島川平、波照間島、与那国島ほかである。すでにインフォマントはほぼ予定されていて、現地調査を実施するのみとなっている。 最終年度であるので、調査結果を分析し、その結果を成果として発表や報告書、論文につなげていく。このような成果は、本研究で「ベシ由来形」と称している語形が、まさに古代語のベシに由来する語形であるという可能性がきわめて高いことを裏付ける。この成果は琉球諸方言における意志勧誘推量表現の歴史的変遷を考察する際に重要な一部分をなすことになるだろう。
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