西表島祖納方言の特定の文の述語にあらわれるbe:という要素がどのような意味用法をもち、どのような分布をしめすのか、それは古代語のベシと関わるのか否か、現地調査によってそれをあきらかにすることがこの科研の目的である。 平成26年度は竹富町の波照間島、西表島船浮、宮古島市の来間島、同久松、同池間島、同大神島、同狩俣、同島尻の方言調査を実施した。 全体的な結論として、南琉球方言にみられるbe:やbja:は、東日本方言の推量や意志、勧誘にみられるベーなどと同様に、そして、かつてネフスキー(1926)が指摘したように、古代語のベシに由来するもの、ベシ由来形であることを確認した。また、その分布は宮古地域を中心としていて、八重山地域では西表島にしかみられないという、興味深い分布であることがわかった。その文法的な意味は地域によって差があるものの、基本的に推量、意志、勧誘のなかにおさまる。また、勧誘の意味については、宮古方言地域のなかで、北部にはその使用がみとめられるが、南部にはないことを確認した。 当該の要素が古代語のベシに由来するものであることが確認できたことにより、南琉球諸方言におけるベシ由来形の存在は、この形式の周圏分布を意味するものであり、日本語史研究にとっても相応の意味をもつだろう。 研究成果については、「宮古諸方言におけるベシ由来形の使用実態」沖縄言語研究センター定例研究会(下地賀代子との共同発表 2014.07.05)、および「宮古諸方言におけるベシ由来形の使用実態」『琉球の方言』 39号 pp.141-164 法政大学沖縄文化研究所( 2015.3 下地賀代子との共著)がある。
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