日本語に関しては,節境界の種類や後続節長と,節境界におけるsilent pause (SP) やfilled pause (FP) の持続時間との関係を, 『日本語話し言葉コーパス(CSJ)』を用いて調べた。SPの持続時間,SP + FPの持続時間は境界の深さと関連があり,境界が深いほど長い傾向にあった(文境界 > タイプCの節境界 > タイプBの節境界)。しかし,FP長だけを見ると,境界の深さとの明確な対応は観察されなかった。境界の深さに対応したSP長の違いは,概念生成レベル(conceptualizing)の認知的負荷の違いを反映しているのではないかと考察した。 また,SPの持続時間,SP + FPの持続時間は,節境界(タイプB,タイプC境界)においては,後続節が8文節になるまでは,後続節長の増加に伴って伸長する傾向があった。しかし,文境界においては,後続節長との明確な対応は観察されなかった。FP長単独では,後続節長との対応は見られなかった。後続節の伸長に伴うSP長の増加は,言語化(grammatical and phonological encoding)の認知的負荷の違いを反映しているのではないかと考察した。以上のように,日本語に関しては,SPやFPの音響的特徴(持続時間)と発話生成プロセスとの関連についての分析を行った。 英語に関しては,自作コーパス,COPE (Corpus of Oral Presentations in English)のタグを詳細化した。具体的には,名詞節,副詞節,形容詞節の境界タグ,言い淀みタグを精緻化した。しかし,日本語の分析が進むにつれ,句境界情報の重要性が明らかになってきた。そこで,今後,さらに,句境界情報の付与を進めていく予定である。
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