研究課題/領域番号 |
24520496
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
橋本 ゆかり 横浜国立大学, 教育人間科学部, 講師 (40508058)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 認知言語学 / 用法基盤モデルUsage-based Model / 第二言語習得 / 母語習得(第一言語習得) / ピボット・スキーマ / 文法習得 / こどもの言語獲得 / フィールドワーク |
研究概要 |
本研究は、認知言語学・用法基盤モデルの観点より言語習得のプロセスとメカニズムを明らかにする。まずはL2幼児、次にL1幼児、L2成人と調査を進め、最終的にL1幼児・L2幼児・L2成人で比較し、領域固有の特徴と普遍的なメカニズムを解明する。橋本(2011等)では「ピボット・スキーマ」(Tomasello 2003)を援用した言語構造構築メカニズムの仮説「スロット付きスキーマ合成仮説」(Composition of Schemas with Slots、以下、CSS仮説)を提案したため、当該仮説の検証にも繋がる。加えて、知見を教育現場へ還元する。意義は、丸暗記の固まりが言語習得に結びつくのかという世界的議論に対する答えを提示することである。平成24年度は、設定した4課題のうち課題1(1-1,1-2,1-3)L2幼児の研究と課題4を行う予定であった。課題ごとに成果を報告する。 課題1-1 どのように日本語の文法が習得されていくのかを明らかにする。成果:①動詞形態素の習得プロセスを分析し、CSS仮説の妥当性を確認した。②ピボット・スキーマからアイテムベースへと習得が進むことを論文で示した。③講演を行い、CSS仮説の妥当性を発信した。 課題1-2 文構造の複雑化に伴う習得の段階性を明らかにする。成果:接続詞を用いる表現の習得プロセスを分析した。 課題1-3 橋本(2011等)では母語の影響を確認した。他言語母語の学習者は、どのようなプロセスを辿るのかを追究する。成果:①アフリカ生まれのL2幼児の発話調査を保育園で開始した。②小学校で、ポルトガル語母語のL2児童の発話調査を開始した。 課題4.言語獲得に必要な環境と方法を探る。成果:①幼稚園で参与観察した。②小学校で参与観察した。③L2児童の抱える問題を追究した。④教師の資質と教員養成のあり方を追究した。⑤認知言語学を応用した辞書の執筆をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.講演を4回ほど行い、研究において明らかになった知見と、自分の提案した仮説の妥当性を発信した。 2.新たなフィールドである幼稚園と小学校の両方において、データ収集を開始した。3.昨年常勤職に就いたこともあり、新しい職場での新たな仕事に時間を割いた。 1~3の研究活動を精力的に行ったため、データの分析が若干遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
[平成25年度研究計画]平成25年度は、平成24年度の課題1-1、課題1-2、課題1-3、課題4について引き続き追究し、論文化と発表に力を入れる。加えて課題2へと研究を進める。 課題2 L1幼児の研究-文法カテゴリーごとの習得プロセスの解明と用法基盤モデルのピボット・スキーマ(Tomasello 2003)を援用したCSS仮説(橋本 2011等)の妥当性の検討を行う。CSS仮説が日本語のL1習得研究においても有効であるのか、綿密な調査を行いながら追究する。橋本(2008)においては、L1幼児の可能形の習得プロセスを明らかにし、当該仮説の有効性を示している。当該年度は、他の文法カテゴリーについて追究する。L1習得の先行知見は大量にあるため、参照しつつ研究内容の深化を図る。 [平成26年度の研究計画] 課題3 L2成人の研究-文法カテゴリーごとの習得プロセスの解明とCSS仮説の妥当性を検討する。L2幼児において研究対象とした文法カテゴリー(テンス・アスペクト、否定形式、可能形式、助詞)がどのように習得されているのかを、L2成人において追究し、CSS仮説があてはまるのかを検討する。年齢、認知能力、環境、母語の影響といったさまざまな要因を考慮しながら、L2幼児・L2幼児・L2成人の言語習得プロセスにおける差異が何に起因するのかを、課題1と課題2において得られた知見を踏まえて解明する。 【データの補充と分析】平成20年にL2成人のデータを約半年収集した。文字化し分析する。さらに、L2成人のデータを補充する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、東京近郊における講演が多く、海外や地方における研究発表を行えなかったため、残額(未使用額)が生じた。平成25年度は以下のように使用する予定である。 1.データ収集・分析のための経費(約40万)-フィールドワークで使用するICレコーダー、データ収集協力者に対する謝金、文具等に使用する。 2.図書購入のための経費(約60万)-本研究は、海外の習得研究の知見を踏まえたものであり、海外の最新の文献を入手しながら進める必要がある。特に海外の最新の図書は高額であることが多い。さらに、本研究は、発達心理学、言語学、認知言語学、心理言語学、教育学、社会言語学、保育など複数領域に跨るため豊富な知見に支えられており、広範囲に亘り文献を入手するのに使用する。 3.成果発表のための旅費と参加費(約10万)-成果を発表するために、学会参加費用に使用する。
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