研究課題/領域番号 |
24520500
|
研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
杉村 孝夫 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (60083234)
|
研究分担者 |
松田 美香 別府大学, 文学部, 教授 (00300492)
日高 貢一郎 大分大学, 教育福祉科学部, 教授 (30136767)
二階堂 整 福岡女学院大学, 人文学部, 教授 (60221470)
|
キーワード | 方言談話 / 談話の変容 / 青森県津軽方言 / 東京都山の手の言葉 |
研究概要 |
方言の表現形式を変化という観点でみると、世代を通じて変わらず伝承される方言形式と共通語へと変化する形式、変化するが共通語とは異なる方向へと変化するものがある。本研究は、この第3のものに焦点を当て、東北・関東・近畿・九州の各地で場面を設定した方言談話資料を収集し、「共通語には変化しない方言形式」とその特質を解明することが目的である。 本研究のメンバーは2009~2011年の3年間、大分県方言について、30年前、60年前の収録に次いで第3次として、1次2次と同様の場面を設定した方言談話資料を収集・作成した。そして、文末助詞の抑揚と機能、辞去の場面の分析モデルの考察などを行ってきた。これを受けて2012年度から全国の上記各地における方言談話の変容を探るために、同様の場面を設定した方言談話資料を収集・作成を継続していく。 2012年度は福岡県の3地点を対象地点として臨地録音、文字化の作業を行った。具体的には福岡県豊前市合河、福岡市博多区、うきは市吉井町の3地点である。旧福岡県築上郡岩屋村と福岡県福岡市博多はNHK1954年収録(40代から60代男女)、本研究では60代から70代の男女の会話のほかに20~30代、10代の男女の収録も行った。筑後地区では『方言生活30年の変容』に30年前、60年前の資料のある、うきは市吉井町とした。 2013年度にはNHK『全国方言資料』で収録が行われた東北の青森県黒石市(1953年収録)と東京都山の手(1952年収録)において高年層、青年層、少年層の各世代にわたり、場面設定の会話、自由会話の収録・文字化を行い、方言談話資料を作成した。両地点で得られた談話資料には、ともに共通語とは異なる特徴が見られ、「共通語には変化しない方言形式」の分析と考究が可能であることが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究計画は東北地方と関東地方において3世代の場面設定・自由会話を収録して文字化し、談話資料を作成するとともにおよそ60年前のNHK『全国方言資料』と比較し、談話における方言の変容を探ることである。 本年度は東北地方ではNHKの60年前の方言談話の収録地点と同じ青森県黒石市で3世代の談話の収録・文字化を行うことができた。また、同様に東京都山の手を中心として3世代の談話の収録・文字化を行うことができた。 60年前の資料との比較、談話における方言の変容についての考察は未だ十分進んでいないが、遠隔地あるいは大都市での臨地調査を実施したことの意義は大きい。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は本研究課題の最終年度に当たる。談話の臨地収録・文字化は近畿地方のなかで大阪旧市内を予定している。これの実施により、計画通り、東北・関東・近畿・九州の4地点において場面を設定した方言談話資料が得られることとなるのでこれらの資料と60年前のNHK『全国方言資料』の当該地点との比較を行うことにより「談話における方言の変容」についての考察を行う。 平成26年の年末をめどとして研究成果の公表に向けた検討会を実施する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度、大都市部の調査である東京都の調査は日程を2回に分けて組む必要があった。26年度の大阪市の調査でも同様の日程が予想されたため、研究計画の遂行に支障のない範囲内で人件費・謝金等で節約を行い次年度使用額を余裕をもって準備しておくこととした。 平成26年度は前年度に引き続いて大都市部の調査である大阪市で調査を行う。話者の都合等により調査日程を2回に分けることが予想される。平成26年度請求の助成金に平成25年度からの次年度使用額を補充して調査を実施する。 本研究課題は最終年度のため方言談話資料の収集のみならず、3年間に収集した「音声と文字化資料」の整理に経費を要する。また「談話における方言の変容」のテーマについての考究をかさね、検討会を開く必要があり、旅費を必要とする。平成26年度請求の助成金はこれらのために使用する計画である。
|