研究課題/領域番号 |
24520502
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
DANIEL Long 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (00247884)
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研究分担者 |
小西 潤子 沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 教授 (70332690)
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キーワード | 自然習得 / 言語接触 / ピジン / 準ピジン / 中間言語 / 残存日本語 / 日本語教育 / 旧南洋庁 |
研究概要 |
数多くの研究成果を発表した年であった。まず2013年に研究論文(ロング・ダニエル、今村圭介「パラオで話されている日本語の実態~戦前日本語教育経験者と若年層日本滞在経験者の比較~」『人文学報』473:1-30)を刊行した。2013年5月、奈良大学で開催された第150回変異理論研究会にてロングが「ネイティブ不在地域で発生した新型接触言語 ―パラオ国ア ンガウル島からの報告―」、今村が「南洋日本語のスタイルシフト」とそれぞれ研究発表を行なった。2013年7月にインドネシアとトゥアル島で開催された第9回国際小島嶼文化学会(SICRI9)にて二件の研究発表(Long, "Maintenance of the Palauan Language in the Face of Increasing Globalisation", Imamura "The Development of Japanese Family Names in Palau and the Maintenance of Japanese Given names in the Post-Colonial Period")を行なった。8月31日に国立国語研究所で開催された「海を渡った日本語:日本語変種とクレオールの形成過程」と題した公開研究会でもロングと今村がそれぞれ研究発表を行なっている。9月上旬に130ページのカラー印刷による研究報告書(Long & Imamura _The Japanese Language in Palau_)を刊行し、同月にパラオを訪れた際に関係機関や調査協力者、教育関係者などに寄贈した。パラオの言語調査のメンバーはロングと首都大学院生の今村圭介(D3)、渡辺真由子(M1)、齋藤敬太(M1)、それに奈良大学の桐原寛尚(M2)であった。調査はコロール島およびバベルダオブ島で行なった。 音韻論専門の渡辺はパラオ語に入った日本語起源の単語の音韻対応法則について、中間言語専門の齋藤が非母話者が実際の言語能力レベル以上の印象を与える場合「流暢さ方略」について、それぞれ調査を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は順調にいっています。フィールドワークによる調査もできており、分析も進んでいる。なによりも本研究が解明しようとしている次の2つの問題は段々明らかになりつつある。(1)戦後のアンガウル島のように日本語母語話者(ネイティブ)がほとんど皆無だった地域において、日本語で意思疎通ができる話者が作り続けられたか理由を探ること。本研究ではその歴史的、社会言語学的環境を少しずつ明にしつつある。そして、その形成過程を解明するゴールに一歩近づいている。(2)戦後のアンガウル島で習得された(伝承されたまたは形成された)独特な日本語は母語話者が話せるような「完全な日本語」ではなく、明らかにそれに比べて不完全な言語であり接触言語の一種であるが、それはこれまでの言語接触論の枠組みでは捉え切れなかった変種であるのは明らかだ。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はパラオの現地調査を継続する。アンガウル島との比較対照のため、コロール島やバベルダオブ島で話されている日本語の録音データをも録っている。去年から本課題に興味をもつ優秀な大学院生が大学院に入ったので、データの採集と整理(文字起こしなど)、分析が捗っている。今年度も分析を進めながら国内外の研究集会で報告をし、様々な研究分野の人から批判、フィードバック、アドバイスをもらうとともに、一般人(非専門家)を対象に、アンガウル島のように日本語が独自に進化している場所がある実態を知ってもらう活動を続けたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画パラオの現地調査の期間を短縮した。理由はパラオの重要な調査協力者(インフォーマント)の1人がご高齢で病院の検査のために長期にわたり、米国本土に行っておりパラオにいなかったからです。 25年度から26年度に繰り越した予算は26年度の出張旅費に当たる。そのために当初の26年度計画より少し長めの調査期間が可能になる。
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