研究課題/領域番号 |
24520504
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
丹羽 哲也 大阪市立大学, 文学研究科, 教授 (20228266)
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キーワード | 日本語文法 / 名詞 |
研究概要 |
将来の目標として、名詞の関係性に着目した文法的な分類を行うということがあり、そのための基礎的な研究として、連体修飾構造、存在文、名詞述語文などの構造を考察するというのが、現在のところの課題である。その中で、本年度は次の研究を行った。 (ア)連体修飾構造の修飾部分のアスペクト・テンスについての論文を発表した。いわゆる内の関係に比べて、外の関係の連体修飾構造のアスペクト・テンスの問題は相当に複雑で、単純な類型化はできないが、主名詞の性質、連体節基本形・タ形の性格、主節述語の性格という三つの要因が関わることを述べ、「結果、返事、感想、お祝い、恐怖、罪、原因、理由、事件、事故、姿、話、手紙」などの名詞について、代表的なパターンを素描した。 (イ)存在表現の研究に着手し、「AはBにある」という所在文の類型について発表を行った。「BにはAがある」という存在文に比べ、所在文に関する先行研究はほとんどなく、「時計は机の上にある」のような場所表現にしか言及されていない。本研究では、抽象的な意味を表す名詞を含む所在文に着目して、場所型の他、出来事型(事故は夜中にあった)、所有型(権利は作家にある)、付随型(独自性はこの作品にある)、内容型(事故の原因は過積載にある)、状況型(余震活動は高いレベルにある)というタイプに分けられることを示し、合わせて、所在文「AはBにある」と存在文「BにはAがある」「AにはBがある」との対応関係が、この類型に連動していることを述べた。引き続き、存在文の類型について考察を進めつつあり、また、これら所在文・存在文と名詞述語文との間の対応関係がいかなるものであるかという問題にも取組みつつある。 (ウ)上記の文法的な問題は、文体の問題にも関わりがあり、その関係の内実を探りつつある。その中で、文語と口語の関係について、論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
連体修飾構造に続いて、存在表現や名詞述語文に取り組み始めている点では、着実に研究を遂行しつつある。とはいえ、存在文の研究は、中間的な発表を行うに留まって論文化が遅れており、存在表現と名詞述語文の関係の研究は、まだ緒に就いたばかりの段階である。抽象的な名詞で使用頻度が高いものだけでも膨大な数に上るため、どの構文においても、代表的なパターンを取り出すのにかなりの困難を伴い、ある程度の成果を出すのに相当な時間を要する。
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今後の研究の推進方策 |
所在文「AはBにある」と存在文「BにはAがある」の分類に関する論文をまとめ、これら存在表現と「AはBだ」「BはAだ」という名詞述語文との対応関係の考察を進める。また、連体構造や主題文について、改めて自他の先行研究を振り返りながら、名詞の分類という観点から捉え直す。これらを通じて、諸構文の相互の関係がどのようなもので、それが名詞の意味とどのように関係するか、総合的な研究をめざしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
パソコンの購入を次年度送りにしたため。 パソコン購入の一部にあてる予定。
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