日本語の文法研究の中で、名詞の研究は最も遅れている領域である。本研究は、名詞の中でも抽象的な意味を持つ名詞に焦点を当て、その意味的・文法的性格を解明することを目的としている。具体的には、「連体節+主名詞」(「事件が起きた背景」)、「名詞+の+主名詞」(「事故の原因」、「彼女の性格」)、「存在文・所在文」(「この曲には独創性がある」・「人は死ぬ運命にある」)、「コピュラ文」(「将来の懸念はインフレだ」)などについて、各構文の下位分類と、構文間の相互関係、名詞の意味類型との関係を考察し、将来の抽象名詞辞書構築のための基礎とした。
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